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女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。

躍るアトム(その4)

 現在2016年2月15日20時36分である。

「ちゃんと、早く、寝てる?」

 うん。一時、4時、5時、に寝ていたけど、最近は、2時くらいには、布団に入ってる。

「だめー、2時なんて。少なくとも、0時には、寝なさい。」

 寝なきゃ、とは、思うんだけどね、私の頭って、3時とか4時頃に、一番、冴えるんだよね。

「太郎さんの、過去の発見は、いつも、深夜だった?」

 うっ、そう突っ込まれると、痛いな。

 1からnまでの数を2乗してシグマで和を取る公式も、電荷ローレンツ変換の概念も、明るいときだった。

「ほら。やっぱり。」

 厳しいところ、突いてくるな。

「私も、科学的に追及するようになったのよ。太郎さん、自業自得ね。」

 分かりました。今日も、早く寝ます。


「ところで、『躍るアトム』をもう一回?」

 うん。

 麻友さん、あのとき、ピッタリ、りんごの直径になったから、感動しちゃって、本来この文章が、どういう目的で、書かれていたか、忘れちゃってたから。

「どういう目的って、りんごの大きさじゃないの?」

 ほら、こうなっちゃってる。

 もう一度、読んでみて。

{\mathrm{The\ atoms\ are\ 1\ or\ 2\times10^{-8}cm\ in\ radius.}}

{\mathrm{Now\ 10^{-8}cm\ is\ called\ an\ }angstrom\ \mathrm{(just\ as\ another\ name),}}

{\mathrm{so\ we\ say\ they\ are\ 1\ or\ 2\ angstroms\ ( \overset{o}{A} ) \ in\ radius.}}

{\mathrm{Another\ way\ to\ remember\ their\ size\ is\ this:}}

{\mathrm{if\ an\ apple\ is\ magnified\ to\ the\ size\ of\ the\ earth,}}

{\mathrm{then\ the\ atoms\ in\ the\ apple\ are\ approximately}}

{\mathrm{the\ size\ of\ the\ original\ apple.}}


『原子は、{1\times10^{-8}\mathrm{cm}}から、{2\times10^{-8}\mathrm{cm}}くらいの半径です。』

{1\times10^{-8}\mathrm{cm}}という長さを、(別名)オングストロームと呼ぶ。』

『そこで、原子は1ないし2オングストローム(Å)の半径であるといえる。』

『これらのサイズを思い出せるもう一つの方法が、これである:』

『もし、りんご1個を、地球のサイズまで、押し広げたとする、』

『そうすると、押し広げたりんごの原子の大きさは、大体、』

『押し広げる前の元のりんごの大きさくらいである。』


「どうして、毎回、毎回、きちんと全部、持ってきてくれるの?」

 インターネットだから、前に書いたものは、スクロールして見て下さい、としてもいいんだけど、人間って、無精だから、どうしても、毎回、見返す、ということをしない。

 この無精は、学問をやっていく上で、非常に、まずいんだ。

 本当のことを言うと、手が覚えるくらい、一つの定理の証明を何度も書くくらいのことをしないと、数学が本当にできるようには、ならないんだ。

 まあ、この一文は、非常に重要だから、麻友さんが、飽きるほど、何度も、目に触れるように、しているんだ。

「この文章の重要さって、本当は何?」

 分からないかなあ。

 我々の持っている普通の大きさのもの、今はそれの代表としてりんごを取ったんだけど、それを、地球の大きさまで、グイーンと広げてやると、その広げてやったりんごの、原子の大きさは、・・・

「あっ、分かった!その、広げたりんごの原子が、元のりんごの大きさくらい、というわけね。」

 そう、そう。

「それで、何が本当に重要だったのかしら?」

 そうなんだねぇ。なかなか、普通の人にとっては、このハードルを越えるのすら、難しいんだなあ。

 原子って、どのくらいの大きさ?

「だから、1オングストロームって。」

 そうじゃなくて、イメージで、どのくらいの大きさかな?

 例えば、秋葉原のAKB48劇場と東京ドームは、大体1830m離れているんでしょ。

 今、普通のりんごを、地球の大きさまで、押し広げたとき、押し広げたりんごの中の原子は、この1830mより、大きいだろうか?

「えっと、だって、りんごの原子は、元のりんごの大きさになっているって、計算したじゃない。」

 そうなんだよ。

「えっ?」

 だから、あの小さい直径5cmのりんごを、この地球の大きさまで、拡大してやっても、原子1個は、秋葉原と後楽園の距離にすらならないということなんだよ。

「あっ、じゃあつまり、5cmってことか。」

 そう。


 ところで、麻友さんが、納得できないのは、地球の大きさが、つかみ切れてないからだと思う。

「馬鹿にしないでよ!私、シンガポールの公演に行ったこともあるのよ。」

 あっ、シンガポールなんだ。私の唯一の海外旅行先が、シンガポールなんだよね。

「どうして、太郎さん、シンガポールへ行ったの?」

 父が、単身赴任で、3年間かな、行ってたんだよね。

 それで、家族みんなで、遊びに行ったってとこかな。

「私の父も、単身赴任が多くて・・・」

 その情報、既に入ってる。

 そもそも、麻友さんは、小学校6年生の頃から、アニメとかインターネットに、のめりこんでいて、学校から帰るとパソコンに直行という生活を送っていたそうじゃない。

「一部ではそう言われてるけど、私は、お母さんっ子だったし、お姉ちゃん達とも仲が良いから、『パソコンに直行』っていうのは、言い過ぎね。」

 私も、高校2年生になるとき、父が、広島の三次に転勤になって・・・

「『三次』ってなんて読むの?」

 鋭い。そういう風に、分からないことは、何でも質問して。そのための恋人なんだから。

『三次(みよし)』と読みます。広島県三次市なんだけど、交通の要衝とは、いうもののかなり田舎ではある。

「太郎さんも、そこにいたの?」

 いや、単身赴任と言ったように、三次には、父だけが行ってたんだ。

「あっ、そうか。太郎さんは、もう高校に入ってたから、行かなかったのね。」

 そうでもない。出向先の社長さんが、ものすごく父に手厚くしてくれて、家族のために、広島市内に家を借りて、社宅として使わせてくれたんだ。

「太郎さんのお父さまって、VIPなの?」

 うーん。ブイアイピーかどうかは、知らないけど、ものすごく厚遇された。


「高校は、でも、行ってたんでしょ。」

 選択肢は、3つあったんだ。

1.一人で残る。

2.家族とともに広島へ行き、大検(大学検定試験)を受ける。

3.家族とともに広島に行き、向こうの高校に編入する。

 最初のものは、横浜翠嵐高校で、良い人間関係ができていたので、抜けたくなかったのと、転校先で、いじめられた経験があったので、恐かったのとで、十分有り得たんだけど、当時まだ一人暮らしをできるだけのまともさを持ってなかったんだ。それで、ボツ。

 2つ目のものは、実際に、大検の試験問題を、調べてみたんだ。そしたらね、すっごく問題が易しいんだよね。それでね、こんな易しい問題を解くことで、高校卒業しました、なんていったら、文化祭とか体育祭とか合唱コンクールなんかの高校らしい行事で得られるものを、みんな失うことになるな、と思って、それでボツにしたんだ。


「じゃあ、編入試験を受けたの?」

 そう。

「当然合格よね。」

 落ちたんだ。

「エーッ、太郎さんが?」

 理由は、2つあるんだ。

 私は、高校1年のとき、本当に数学しかやってなかったんだ。

「今でも、そうじゃない。」

 まあ、確かにそうなんだけど。

 とにかく、学校全体で行われる国語・数学・英語3科目の試験の合計得点で順位を付けて、私は学年で37番、クラスで2番だったかな、だったわけだけど、国語や英語は、授業に出てノートを取っているから、及第点だったんだよ。

「前に、太郎さんが、横浜翠嵐高校って言ってたから、調べたんだけど、大宮高校や浦和高校と、遜色ないくらいのものすごいレヴェルなのね。そこで、クラスで2番って、ものすごくガリ勉しなきゃだめよね。」

 前から言っているように、数学に関しては、ガリ勉通り越して、研究に近いことやってたけど、それ以外の科目は、授業だけなんだよ。

 もうちょっと言うと、予習と授業かな。

「復習は?」

 しない。

「えっ?」

 本当に、私って、復習しない子供だったんだ。テスト受けたら受けっぱなし。

「それで、京都へ、行ける・・・」

 私も、大学中退して帰ってきて、自分の半生を振り返ってみて、

『ああ。復習したり、返ってきたテスト見返していれば、もっと成績が伸びたのになあ。』

と、反省したよ。

 とにかく、当時は、反省する前だったから、数学以外の科目は、実力がなかった。

「じゃあ、編入試験は、どんな感じだったの?」

 最初に、国語と英語の選択式の問題に、とりあえずのまるをつけておいて、後、ずっと数学の問題を解いていた。

「それで?」

 全部解き終わったら、

『じゃあ、いいですか?』

というので、渡して終わり。

「でも、学校で上位10パーセントに入る人が、落ちるなんて。」

 学校の試験では、授業で教えたのと同じ、例文や、英文が、出てくるから、解ける。

 でも、他流試合になったら、どんな問題が出てくるか分からないから、実力がなければ問題が解けない。

 簡単なことだよ。

「それが、実力ね。」

 私が、麻友さんに与えようとしているのは、数学と、物理学の、実力です。

「でも、それだけで落ちたの?」

 まあ、そうだろう。

「本当に?」

 やっぱり、麻友さんは、私のパートナーになる人だな。分かってる。

 あの高校の先生方も、私の半端でない数学の力には気付いただろうし、その高校を受けさせてくれた、社長さんに対しての世間体もある。

 私が落ちたのは、もう一つの理由のためである可能性が高い。

「そういえば、さっき2つって言ってたわよね。」


 私が、

『この高校、来たくないなあ。』

と思っていたからなんだ。

「また、すぐそういう精神論を持ち出す。」

 違うんだ。精神論じゃないんだ。

 試験の当日、母と朝早く、芸備線(げいびせん)で、その高校へ行った。

 そして、門のところで、待っていたんだけど、向こうから、人が来た。

 母は、ちょうど背中側だったので、見えなかっただろうけど、私には、学校の人だろうな、と分かった。

 ここが、重要なんだけど、もし、私が、喉から手が出るくらい、その高校に行きたかったら、その人が、例え用務員さんでも、帽子を取って、挨拶しただろう。

 だが、私は、我々を迎えに来た人かどうか分からないから、と思って、挨拶しなかったのだ。

 京都大学に入りたいというときには、本当に、あらゆる犠牲を払ったんだよ。

 これが、人の心だよ。

 そして、上の不合格は、さらに上塗りされる。

 試験が終わって、答案用紙を渡したとき、向こうの先生が、

『三菱さんのお子さんですか?』

と、聞いた。

 それに対し、私は、

『三菱のことは、分かりません。』

と、答えたのだ。

 まず、父の会社から見ても、

『三菱さん』

と言わねばならなかったし、もっと熱心に応対すべきだったのだ。もし受かりたかったら。

 でも、私は、受かりたくなかったし、実際受からなかった。

 人生とは、こういうものだと思う。


「なるほどねぇ。聞いてみるものね。でも、なんでその高校に行きたくなかったの?」

 男子校だったから。

「えっ、太郎さんの言葉とも思えない。」

「あっ、いや、でも、有り得るかも。」

「43歳になって、AKB48の女の子、本気で口説くなんて、女性が好きなのよね。」

 そう、そういうこと。

「太郎さんに取って、カップルになるかどうかということ以上に、女の人と触れ合っていたいのよね。」

 さすが、麻友さんは、良く分かっている。

「ここで言う『触れ合う。』は、体が触れるとかそういうことじゃなくて、『人として触れ合う。』ことなのよね。」

 そこまで、麻友さんに、必死で伝えた。


「ところで、聞きたいんだけど、太郎さんは、物理学が得意よね。」

 まあ、いちおう。

「その物理学を使って、人の心を操るなんてことも、できるの?」

 ある程度は、可能。

「エーッ、じゃあ、私の心も、ウッ、ウッ。」

 いったいどうしたの?

「太郎さんが、私の心を操って、太郎さんを好きにならせたのね。ウッ、ウッ。」

 どっから、そこへ、飛んだんだい?

「この間、『物理を使って私を射止めた』って、ツイートしてきたじゃない。エーン(泣)。」



 分かった。2016年2月8日のツイートで、


『物理を使って渡辺麻友さんの心を射止めた。』といえば若い人が物理学を勉強するようになり責任は果たした。


と書いたことだね。



「そう。私の心を弄んで・・・(涙)。」

 ああ、どうしよう。

 この、失った信頼を、どうやったら取り戻せるだろう。

「取り戻せやしないわ。太郎さんが、私の心を自由にしていたというのは、本当なのだもの。」

 正直に、白状するけどねぇ。これ、冗談なの。

「ウソよ。さっき、『ある程度は、可能。』って、はっきり言った。」

 だから、可能は、可能なんだよ。

「どういうこと?」

 麻友さんは、健康だから、MRI(核磁気共鳴画像法)の検査なんて、受けたことないかも知れないけど、名前くらいは知っているでしょう。

「うん。大きな機械があって。」

 そう。大きな機械があって、

『入ると大きな音がしますから、ヘッドホンをかけて下さい。』

と言われて、音楽を流してくれるんだけど、中で、機械がガンガン言い出すと、その音楽が、歪むんだ。

「そういうものなの?」

 うん。

 どうして音が歪むと思う。

「だって、核磁気って言うんだから、磁石の力が働くんじゃない?」

 もちろん、それもあるだろう。

 でも、それだけじゃないと思う。

 脳の中の状態を見ることができる、ということは、見られた方も、

『あっ、見られた。』

と、影響が出る。

「えっ、見られたら、絶対、分かるの?じゃあ、週刊誌も恐くないわねえ。」

 まあ、どこまでを観測というかによるんだけどね。

 私と一緒に物理学の研究している人とは、まったく光で照らしもしないで、爆弾を発見するなんてことも、調べようとしている。

「なんだか、とんでも科学っぽいわねぇ。」

 いや、これは、量子力学観測問題と言って、このブログのメインテーマの一つになってくるんだ。

「一体、メインテーマが、いくつあるの?」

 この観測問題を解かないと、地球を動かせないし、人も生き返らせられない。

「ウワァー、深刻。」

 差し当たって、今は、見られたら、見られたと分かるとしておこう。

「それで?」

 MRIの機械で、脳を輪切りにした断面を見ているとしよう。

「そうすると、見られている人が、『見られた。』って思うのね。」

 そう。ただ、その思い方が、

『脳に何かされてる。』

なんだけど、それを感覚としては、

『あっ、音が歪んでる。』

と、感じるんじゃないか、というわけ。

「で、何の話だっけ。」

 まったく、しゃあしゃあとしたもんだな。

 さっき、泣いてたじゃないか。

「えっと・・・」

 麻友さんの心を操ってたんじゃないかって、疑ってたんでしょ。

「そうよ。だから怒ってたのよ。」

 私が言ってる、

『心を操る。』

というのは、こういう、

『音が歪んだ。』

くらいのことしか、まだできないよってこと。

「あっ、えっ、それだけ?」

 うん。

「じゃあ、ただの冗談みたいなことじゃない。」

 だから、冗談だって言ってるのに。

「いや。駄目よ。騙されないから。」

 えっ。

「太郎さんは、どんな手を知ってるか、分からない人だもの。」

 そんな。

「そもそも、私、本当に、太郎さんのこと好きになっちゃってるし。」

 わぁー、嬉しいなぁ。今の告白と取っていい?

「冗談じゃないわ。どんどん心を操られてる。どうしよう。」

 本当に、そんな、麻友さんが嫌に思うことなんて、してないんです。



と、ここで、麻友さん、一つ提案。

 麻友さんと私が、このように、何かが原因で、とんでもなくある問題でこじれたとしよう。

 それが、いつか、またどんな問題かは、分からない。

 とにかく、そういう事態になったとき、私の側が、自分に不利になったとしてもいいから、どうしても麻友さんとの関係を続けたいと思った場合、この話を会話で持ち出すことにする。

「この話って?」

 このMRIとか心を操ったとかにつながってくる一連の話。

「覚えてなかったら?」

『こういうどうしようもなくなったときの話』って、言えばいいじゃん。

「それで?」

 私が、この話を持ち出した場合、それは、非常手段だから、私の側は、無条件降伏する。

「無条件降伏って?」

 要するに、麻友さんのどんな要求も呑むということ。

「それで、どうなるの?」

 麻友さんの側は、私をどうすることも可能だけど、できれば、それ以上攻撃しないで。お願い(頼)。

「あぁ。それが、交換条件なのね。」

 これ、ものすごく大切な約束だから、麻友さんの側が、批准するまで、麻友さんの側は、有効にしなくてもいいけど、私の側は、批准しておくよ。

「太郎さんに取って、どういうメリットがあるの。」

『これ以上、攻められると、もう後がない。』

ということを、2人の共通の温かい思い出と共に、伝えるというメリット。


「だったら、どうして、『もう後がないよ。』って、言わないの?」

 数学で、一番大切なことを、麻友さんは忘れている。

「なんだっけ?」

 『この解法は、エレガントだ。』と言われることほど、数学者冥利に尽きることはないんだ。

「つまり、美しいってことね。」

 そう。

 この約束事、美しいと思わない?


「分からないけど、その話を作らなければならなかった、ということは、もう、これ以上、『心を操ったでしょ。』って責めないでってことね。」

 はい。

「じゃあ、無条件降伏したならば従いなさい。」

 なんでしょう。

「今すぐ、ブログを止めて、寝なさい。」

 これは、従わないと、ルール違反だからな。

 おやすみ。

「おやすみ。」

 現在2016年2月16日2時11分である。おしまい。