女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。

1から始める数学(その12)

 現在2016年7月24日20時31分である。

 麻友さん。大丈夫?

「なんのこと?」

 最近、このブログが、麻友さんに難しくなってきてるかな、と思って。

「前からのことじゃない。」

 ただ、最近、大学に行ってない友達から、

『松田さんのブログは、難しくて読むと調子が悪くなるので申し訳ありませんが読んでいません。』

なんて言われて、数学的にも難しいし、日本語も難しいので、同じように大学に行っていない麻友さんから見て、読むのが辛いかなと思ったんだ。

「確かに、太郎さんが、私を好きになったばっかりの頃は、話が具体的で、意味も良く分かったわ。」

 あの頃の方が、麻友さんに遠慮していたからね。

「そう。最近、数学の勝負が、ストレート勝負になってるのよね。」

 それだけ、中身の濃い話をしてるんだけど。

「でも、まだ『{2}』よ。」


 では、{2}まできたら、後は、速いことを、示そう。



 定義 12

 {A}{B}が、すでに自然数だと分かっているとする。

 この時、{+}の記号を用いて、

{A+B}

と書かれる記号の列は、自然数である。

 定義 12 終わり



 これが、この前、麻友さんが、


自然数というものを、

{1+1+1+1+1+1+1}

などとして、表して、』


と言ったものに、相当する。

「だとすると、私達の自然数は、こういう風に、{1}を並べたものと、考えなきゃいけないの?」

 そんなことは、ない。

 数学というものは、自由なものなんだよ。

 こう考えなきゃいけない、なんてことはない。

「じゃあ、どうしてさっきのような、定義をしたの?」

 どんなものでも、科学というものをやっていく場合、何かとっかかりを作らないといけない。

 {1}を並べるというのは、私なりの考え方、なんだ。

「太郎さんの、考え方なの?」

 もっというと、昔々、コーエンという数学者だと思ったら、エルデシュという数学者だったという、

『麻友さんの歳は、7億歳。』

という話の時の、ちょっと名前を頭の片隅に入れておいてね、と言った、竹内外史(たけうち がいし)さんの、次の本で説明してある方法だ。

復刊 証明論入門

復刊 証明論入門

「証明に、『証明論』なんていうものがあるの?」

 この本は、少なくとも今は、読んじゃ駄目だよ。

「どうして?」

 数学で、気にしなくていいことまで気になって、先に進めなくなるから。

「R-18指定ということね。」

 なんか最近は、ややこしくなって、R-18+指定というらしいよ。

「『CROW’S BLOOD』は、R-15+だったみたいね。」

 あんまり気持ちの悪いのに出ないでよ。見る私の身になって。

「私は、それを演じてるのよ。」

 例えば、一度も脱がなかった、吉永小百合のように、どこかにきちんと、線を引いてね。

「数学から、離れちゃった。なんの話だっけ。」

 {1}を並べる定義が、私流だったという話。

「私も、私流の定義をして良いの?」

 もちろん。その代わり、私のものとの対応関係を、きちんと考えてね。

「えーっ!」

 というか、麻友さんの心の中にある、

『麻友さんの数学の良心』

の認める、数学にしてね。

「私の良心?」

 これって、ウソっぽいな、ということは、例え教科書に書いてあっても、認めちゃ駄目だよ。

「そういう潔癖症って、社会では、嫌がられるのよね。」

 今消えちゃってるけど、以前、

『誰だって正義には勝てない』

という題の投稿で、そのことを書いたことがある。

 でも、麻友さん、安心していいよ。

 数学の世界で、どんなに、正義の味方になって、弱い敵のモンスター、バッサバッサ叩きのめしても、正しさを最後まで貫き通しても、誰も傷つかない。

「じゃあ、数学で、下品なことをするとしたら、どんなことをすればいいの?」

 定理を証明する時、わざと下品にやるとか・・・

「証明を、下品にやるですって!?」

 麻友さんは、これから、どんどん数学の証明をやっていくんだから、いくらでも、エレガントな証明を見ることになる。

 そして、エレガントでない証明、というのも、いくらでも目にする。

 エレガントでない証明の中には、下品なものも、含まれている。

「ふーん。ちょっと実演できない?」

 じゃあ、ちょっと軽く見てみようか。

「楽しみ。」


 今、私達は、いくつかの、自然数を持っている。

「そうね。」

 いくつだろう。

「えっ、ちょっと待って。{1}も、{1+1}も、それから、これらを足し合わせて、{1+1+1}も、自然数で、これらを足し合わせたものも、みな自然数だから、いーっぱい。」

 そんな、幼稚園生のような答えをしても、もう可愛くないぞ。

「じゃあ、無限個って言えばいいの?」

 無限個って、いくつよ?

「もう!意地悪!教えてよ。」

 つまり、有限個じゃないんだよね。1個とか2個とか、数えられない。

「そうよ。どうすれば、そのことを、伝えられるの?」

 もう伝わってるよ。

「えっ?」

 この1文、



「えっ、ちょっと待って。{1}も、{1+1}も、それから、これらを足し合わせて、{1+1+1}も、自然数で、これらを足し合わせたものも、みな自然数だから、いーっぱい。」



を読んだだけで、私達の持っている自然数の個数が有限個ではない、つまり無限個だと、分かる。つまり、ある意味、証明になっている。

「これが、証明?確かに、エレガントではない証明ね。」

 そう。かなり、麻友さんの好きな、下品な証明になっている。

「うっ、言ってくれたわね。じゃあ、私達の持っている自然数の個数が、無限個だということの、エレガントな証明を見せてよ。」

 分かった。

 これから、ひとつひとつの自然数に、それぞれひとつの自然数を対応させる。

 その対応のさせ方とは、

『1たす。』

というものだ。

「えっ、じゃあ、

{1}には、{1+1}を、

{1+1}には、{1+1+1}を、

対応させるというわけ?」

 その通り。さすが、優等生。飲み込みが速い。

「それで、どうするの?」

 この対応では、同じところへ、2カ所から、行くということは、ないよね。

「例えば、対応させた先が、

{1+1+1+1+1}

だった場合、『1たす』というのの結果が、これなんだから、ひとつ1を取って、

{1+1+1+1}

からだけ、ここへきたと分かる。つまり、2カ所からは、この数にはならない。合っていそうね。」

 ところで、1足した結果の方は、2より大きい全部の自然数を覆っているよね。

「えっと、1は2へ、2は3へ、3は4へ、・・・だから、2以上の数には、必ず行く。あっ、3や、4は、まだ定義してなかった。」

 いいんだよ。自分の頭の中で、考える分には。

「エッ、いいの?頭の中なら?」

 麻友さんだって、あるまじき妄想をすることだってあるだろ。どんな、残酷な妄想をしても、悪い妄想をしても、いやらしい妄想をしても、下品な妄想をしても、傲慢な妄想をしても、それが頭の中にある限り、誰にも、干渉されない。この世界では、そういうルールだろ。

「太郎さんも、いやらしい妄想することあるの?」

 なかったら、生きていけない。

「ホッ」

 とにかく、自分の思考のスピードを速めるためには、どんな考え方をしてもいい。

「それで、2より大きい全部の自然数を覆っているとどうなの?」

 図にすると、こういう状態だろ。



{1\ \ \ \ \ \ 2\ \ \ \ \ \ 3\ \ \ \ \ \ 4\ \ \ \ \ \ 5\ \ \ \ \ \ 6\ \ \ \ \ \ 7\ \ \ \ \ \ 8}

{\ \searrow\ \ \searrow\ \ \searrow\ \ \searrow\ \ \searrow\ \ \searrow\ \ \searrow}

{1\ \ \ \ \ \ 2\ \ \ \ \ \ 3\ \ \ \ \ \ 4\ \ \ \ \ \ 5\ \ \ \ \ \ 6\ \ \ \ \ \ 7\ \ \ \ \ \ 8}


「そうね。これから何が、分かるの?」

 自然数の全体の集まりが、その集まりの一部分の2以上の自然数全体とひとつずつ対応し合っている。

「それって、変な事?」

 有限個の数の集合、例えば、{\{1,2,3,4,5\}}と、それから1個除いた、{\{2,3,4,5\}}の間に、それぞれひとつずつの相手がいる対応なんて、つけられる?

「あっ、そうか。ひとつだけ除くって、そんなにすごいことだったんだ。でも、まだ、良く分からない。」

 当然だよ。

 今、言ったようなことは、私が、高校2年生の頃、次のような本で、3ヶ月くらいかけて、勉強したことだから。

ナウム・ヤコブレヴィチ・ヴィレンキン著『無限を求めて-直観と論理の相克-』(現代数学社

「太郎さんは、ゆっくり勉強したのね。」

 そうだよ。

 歴史上最高の数学者でさえ、3ヶ月かかったことだもの、麻友さんに1年かかっても、おかしくない。

「歴史的には?」

 実は、こういうことは、19世紀の終わりになって、ようやく分かってきたことだ。

 だから、有史以来、何千年もかからないと、分からないことなのだった。

「じゃあ、もしかして、私、ニュートンより、すごい数学知ってる?」

 もっちろん。

「嬉しい。でも、疲れた。」

 そうだね。じゃあ、最後に、エレガントな証明の締めくくりをしよう。

「もう、分かったわ。自然数全体の集合は、そこから1を除いた集合と同じ個数ある。こんなことは、有限個では、有り得ない。よって、自然数全体は、無限個の数からなる集合である。」

 『集合』という言葉を使い始めたけど、今のところ、問題ない。

「これと比べると、さっきの私の証明が、品がないと言われても、仕方ないわね。数学で、下品なことをする、というのが、少し分かったわ。」

 なんでも、実際にやってみると、分かるでしょう。

「今日は、疲れた。おやすみ。」

 おやすみ。

 現在2016年7月24日23時12分である。おしまい。