女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

1から始める数学(その14)

 現在2016年8月28日11時43分である。

「今回は、『たのしい算数』の話も出て来るのよね。」

 のっけから行こうか。

「うん。」

 私が、父から、数(つまり正の整数)を、習った後、数日してからのことである。

 『たのしい算数』は、問題集としての役目が主だから、父が説明しなければならない。

 その日、父が、

『この問題やってみろ。』

と言った。


問題

次の数の大小を比べて、かっこに、{<}や、{>}を、入れなさい。

{(1).\ \ 3\ (\ \ \ )5\ \ ,\ \ (2).\ \ 7\ (\ \ \ )5}

{(3).\ \ 1\ (\ \ \ )2\ \ ,\ \ (4).\ \ 9\ (\ \ \ )5}

{(5).\ \ 3\ (\ \ \ )8\ \ ,\ \ (6).\ \ 13\ (\ \ \ )5}

{(7).\ \ 12\ (\ \ \ )18\ ,\ (8).\ \ 17\ (\ \ \ )25}

{(9).\ \ 33\ (\ \ \ )22\ ,\ (10).\ \ 48\ (\ \ \ )46}


 という様な、問題だった。

 もちろん麻友さんは、解けるよね。

「当たり前よ。」

 私は、こう書いたんだ。


私の解答

次の数の大小を比べて、かっこに、{<}や、{>}を、入れなさい。

{(1).\ \ 3\ (\ > \ )5\ \ ,\ \ (2).\ \ 7\ (\ < \ )5}

{(3).\ \ 1\ (\ > \ )2\ \ ,\ \ (4).\ \ 9\ (\ < \ )5}

{(5).\ \ 3\ (\ > \ )8\ \ ,\ \ (6).\ \ 13\ (\ < \ )5}

{(7).\ \ 12\ (\ > \ )18\ ,\ (8).\ \ 17\ (\ > \ )25}

{(9).\ \ 33\ (\ < \ )22\ ,\ (10).\ \ 48\ (\ < \ )46}




 これを見た、父が青ざめて、

『お前これ、0点だぞ。』

と言った。

『そんなはずないよ。』

と、私が言うと、父が、

{3}{5}で、どっちが大きいと思う?』

と、聞いてくる。

{5}だよ。』

と、私が答えると、ますます父は、頭を抱えた。

『お前、この不等号の記号、どう使ってるんだ?』

『こっちが、大きいよって、矢印向けてるの。』

 これで、やっと父も、なぜ私が、全部間違えたのか、分かった。

 私は、不等号『{>}』を、『{\Rightarrow}』の先だと思い、

『こっちが、大きい数だよ。』

と、大きい方にとがった先を向けていたのだ。

『この記号はなあ、大きく開いてる方と、すぼんでいる方があるだろ。大きく開いてる方が、大きい数の方にするんだ。』

『えっ、そうなの。』


「太郎さんでも、そんなことが、あったんだ。」

 あったどころじゃないよ。

 こういう風に、誰でも躓くところをみんな、父とのクイズで、失敗して学んであったから、学校で習った時は、すらーっと通れたんだ。

「確かに、聞けば聞くほど、太郎さんが、誰でも躓くところで、いつも躓いていて、それでいて躓くのが早いから、救われている、というのがあぶり出されてくるわねえ。」

 そしてね、父は、そんなに苦労してないんだよ。

「どうして?」

 だって、所詮、小学校の算数だもの。

「あっ、そうか。」

 だからね。私が言いたいのは、中学ぐらいになって、大人でも難しい問題になってからでなく、小学校入る前に、小学校の算数を、子供に教えれば良いと思うんだ。

 小学校低学年の算数なんて、中卒のお父さまお母さまだって、教えられるよ。

 そして、小学校入学時に落ちこぼれなければ、後は、親がそんなに援助しなくても、子供は伸びる。

「一理ある意見ね。」

 不等号ひとつとっても、こんなに真理が隠れている。


「ところで、私達の数学では、不等号は、どうするの?」

 当然、定義する必要がある。

「どうやって?」

 ある数が、別なある数より大きいというのは、どういうこと?

「別なある数の方を引き算できること。」

 確かに、それは、正解なんだけどね-。

 私達の自然数では、まだ引き算は、定義してなかったでしょ。

「じゃあ、引き算を定義したら?」

 大きい小さいを比べられないのに、どうやって引き算できるかどうか、分かるの?

「あっ、そうか。じゃあ、足し算を使って、定義すれば良いのか。」

 おっ、久しぶりに優等生の冴え!

「特待生じゃなかったの?」

 しばらく、ご無沙汰だったから、ランクダウン。(笑)

「さっきの、{3}{5}では、{3}に、{2}を足すと、{5}になるわね。でも、逆に、{5}に何を足しても、{3}には、ならないわね。」

 そうそう。

「だから、太郎さんのように{A}{B}を使うのは、嫌だけど、

{A+C=B}となる、自然数{C}が、ある時、{A < B}と書く、

と定義するのは、どうかしら?」

 それで、合格だよ。

 定義として書こう。




 定義 15

 {A}{B}を、自然数とする。

 このとき、{A+C=B}となる、自然数{C}が、ある時、

{A < B}(エイ、しょうなり、ビー、と読む。)

と書くことに、定める。

 また、{A=B+C}となる、自然数{C}が、ある時、

{A > B}(エイ、だいなり、ビー、と読む。)

と書くことに定める。

 定義 15 終わり



「定義として書いちゃうと、味気ないわね。」

 そうでもない。慣れてくると、こういう定義を見ると、安心するようになる。

 ところで、この定義は、これだけでは不十分なことに気付いた?

「なんか、言葉が見つからないけど、不完全ね。」

 そう。その『不完全だ』というニュアンス大事にしてね。

「数学の文脈で、ニュアンス?」

 この場合だと、自然数{A}{B}について、

{A < B}{A > B}の両方が、成り立ったらどうするか、

ということに、答えていない。

「あっ、そうよ。そこが、引っ掛かってたのよ。どうするの?」

 こういうことが起こらず、ちゃんと定義が、意味を持つということを、

『この定義は、ウェルデファインド {\mathrm{well}}-{\mathrm{defined}} である。』

と言うんだ。

 きちんと、書くと、




 定義 16

 ある定義が、矛盾なくきちんと定義できていることを、

『ウェルデファインド {\mathrm{well}}-{\mathrm{defined}} である。』

と言う。

 定義 16 終わり




{\mathrm{well}}-{\mathrm{defined}} の訳って、『良い定義』では、ないのね。」

 そう。

『うまく定義されている。』

なんて、訳す人もいる。

 私達は、{\mathrm{well}}-{\mathrm{defined}} と、書くことにしよう。

「それは、そうと、{<}{>}が、{\mathrm{well}}-{\mathrm{defined}} になっていないわよ。」

 どうやって、証明すれば良いと思う?

「今日は、とことん質問形式ね。」

 問題の内容による。

「ちょっと、証明を思い付かないわ?」

 ヒント。

{<}』と『{=}』と『{>}』のうち、2つが同時に成り立つことがあるだろうか?

「えっ、それは、常識的に言って、ないのでは?」

 こういう場合分けのときは、易しいところから、手を付けるんだよ。

「じゃあ、まず、自然数{A}{B}について、{A=B}のときを考える。」

「あっ、そうか。私達は、自然数は、{1}が、並んだものとしていたから、{A=B}ということは、その{1}の数が同じ。」

「つまり、{1+1+1+1+1=1+1+1+1+1}みたいな状態だから、これのどちらかの辺に、自然数{C}を足したら、{=}が成り立たなくなっちゃうのか。」

 そう。良く分かったね。

 特に、私達の定義では、自然数{1+1+1+1+1}みたいな格好をしているということは、良く思いだした。

 特待生に、ランクアップ。

「ウフフッ、褒められるって良いものよね。」

 じゃあ、その勢いで、定理、証明してよ。

「分かったわ。




 定理 17

 自然数{A}{B}について、

{A < B}{A=B}{A > B}の3つのうち、1つそして1つのみが、成り立つ。

 証明

1){A=B}が、成り立つ時、自然数{C}を持ってきて、{A+C}とすれば、{A+C=B}ではなくなるし、また、{B+C}とすれば、やはり{A=B+C}ではなくなるので、{A=B}のときは、{A < B}{A > B}は、成り立たない。

2){A=B}でない時。

私達の自然数は、{1}を並べたものに限られるので、左辺か右辺のどちらかが、{1}が多いのである。

2)-1)右辺の方が、多かったとしよう。この場合、足りない数だけの{1}を、用意し、{+}でつなぎ合わせて、自然数{C}を作ると、{A+C=B}となる。この時、{A < B}である。

 ところで、この場合、{A}より{B}の方が、{1}の数が多いので、{A=B+C}とは、ならない。

 従って、この時、{A > B}とは、ならない。

2)-2)左辺の方が、多かったとしよう。この場合、2)-1)の議論と同じようにして、{A > B}が、証明される。

 そして、この時、{A < B}とは、ならない。

3)以上により、すべての場合がつくされていて、どの2つも重ならないことが証明された。

 証明終わり




書いてみたわ。」

 うん。特待生だけあって、模範解答。

「私、今ほど、不等号に自信持ったことなかったわ。」

 そりゃー、完璧な証明をしたんだもの。

「算数って、馬鹿にできないわね。算数知らないと、数学できないんだもの。」

 じゃあ、今日は、ここまでにするか。

「今日は、数学の話だけね。」

 うん。ばいばい。

「バイバイ」

 現在2016年8月28日16時45分である。おしまい。