現在2017年1月27日17時53分である。
「太郎さん。このブログが、こんな色になってしまったの」
うん。分かってる。私がしたんだ。
「どうして?」
今までのだと、白い地に灰色の字なので、たとえば、『』などが、非常に見にくかった。
「だから、背景を濃くして、字を白くしたの?」
そう。
本当は、あの女の子の絵を残したかったんだけど、無料で使っている身では、そういう細かい処理ができなかったんだ。
「えっ、太郎さん。このブログ、まったく無料でやってるの?」
そうだよ。お金本当にないんだもの。『AKBINGO!』で、須藤凜々花(すとう りりか)さんが、
『キャベツの千切りと納豆だけで、ひとつき生活費1万円に抑えました』
って言ってたけど、それは、その月だけでしょう。1万円で、生活なんて無理。食費だけでも、2万円かけないと、栄養失調になる。
「太郎さんって、本当に、お坊ちゃま育ちだから・・・」
私を、ここまで、贅沢にさせたのは、父や母や祖父母だからね。
いまさら、貧乏根性たたき込もうったって、絶対無理よ。
当時の額で、25万円くらいした平凡社の百科事典のみならず、銀行の営業をしていた叔父さんが、買わされてしまった英語版の百科事典まで、使わせ、幼稚園に入る前からレコードをかけることを許し、今では高すぎて、博物館にしかない、HOゲージ(エイチオーゲージ)の鉄道模型を触らせ、日本最初のパーソナルコンピュータNECのPC-8001を小学校3年生から使わせ、ヴァイオリンを習わせ、・・・
ずっと、お前は、特別なんだと育てたのだもの。
「太郎さんは、お金がなくなったときのことは、考えないの?」
あっ、まだ、話してなかった。
私、つい最近、小説をひとつ読んだんだ。
「まあ、文学青年でもあるのね」
いや、そういう高尚なのじゃないんだ。
実は、大学に入ったばかりの頃、父母に、
『小説を読めば人の心が分かるから』
と言われて、そんなもんじゃないと思いながらも、夏目漱石の『明暗』を読んだんだ。
「本当に、素直よねぇ。親に言われたら、反対のことをするのが、若者なのに」
あはは、私が、素直なのはね、素直にしたがって、ほらやっぱり駄目だったじゃないか、と言うためなんだよ。
「それで、『明暗』を、読んで、どうだったの?」
人の心は分からなかったけど、明治の大文学というのは、受験勉強で読んでた、2ページくらいの文章と違って、頭の中を、ものすごく漢字で満たしたんだ。
「漢字で満たすってどういうこと?」
なんていうんだろう。マンガやアニメやトレンディドラマなんかの単純さから一歩人生が進んだって言ったらいいのかなあ。
頭で、考えるときの、語彙が増えたということだろうか。
とにかく、
『あっ、面白い経験をしたな』
って、思って、
『また小説読んでみようかなっ?』
と思ったんだよね。
「『明暗』って、面白い小説?」
これは、勧められる。
実は、漱石の絶筆なので、未完なんだけど、だからかえって想像の翼が広げられて、面白い。
「青空文庫で、読んでみようかしら」
だったらね、2つのことに注意して読むと良いよ。
まず、分からないことがあっても、注を見ないこと。
これ絶対守らないと、本が台無しになるよ。
それから、長い小説なので(500ページくらい)1日2ページとか決めて、パソコン開いたとき必ず読むとかしないと、最後までたどり着かない。
「もし途中で止まったら?」
三日坊主になったら5日目から気を取り直して読む。
「何よそれ?」
丸山美穂子『TOEIC Test満点講師の100点アップレッスン』(祥伝社黄金文庫)
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に出ている、
『3日坊主になったら5日目から再開』
というのを、応用したんだ。
「本当に、色んな本読んでるわね。Kindleで、毎日2ページか。やってみようかしら。ところで、太郎さんは、最近何を読んだの?」
大学入学後、1991年6月14日から6月20日『明暗』を読んだ後、6月21日太宰治の『人間失格』を読む。
「すっごいスピード読了じゃない」
大学生なんて、自由だから、授業サボって、下宿で一気に読んだんだ。
「太郎さん、のろまだと思ってたら、亀でも、加速装置ついてるのね」
『カチッ』とか言って、(笑)
「それで、『人間失格』読んでどうなったの?」
当時好きだったのは、麻友さんの17歳の頃の顔にそっくりだった、クロイツェル・ソナタの女の人でしょ。
「入学すぐだから、そうなるわね」
だから、こういう手紙を送ったんだ。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
自分には、もともと所有慾というものは薄く、また、たまに幽かに惜しむ気持ちはあっても、その所有権を敢然と主張し、人と争うほどの気力が無いのでした。のちに、自分は、自分の内縁の妻が犯されるのを、黙って見ていた事さえあったほどなのです。
堀木の声も顔色も変っています。堀木は、たったいまふらふら起きてしたへ行った、かと思うとまた引返して来たのです。
「なんだ。」
異様に殺気立ち、ふたり、屋上から二階へ降り、二階から、さらに階下の自分の部屋へ降りる階段の中途で堀木は立ち止まり、
「見ろ!」
と小声で言って指差します。
自分の部屋の上の小窓があいていて、そこから部屋の中が見えます。電気がついたままで、二匹の動物がいました。
自分は、ぐらぐら目まいしながら、これもまた人間の姿だ、これもまた人間の姿だ、おどろく事は無い、など劇しい呼吸と共に胸の中で呟き、ヨシ子を助ける事も忘れ、階段に立ちつくしていました。
神に問う。無抵抗は罪なりや?
堀木のあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判断も抵抗も忘れて自動車に乗り、そうしてここに連れて来られて、狂人という事になりました。いまに、ここから出ても、自分はやっぱり狂人、いや、癈人という刻印を額に打たれる事でしょう。
人間、失格。
もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
と、『人間失格』を引用し、
ここに書いてあるような、太宰のような人間は、やっぱり失格なのでしょうか?
と、ラブレターを書いたんだ。
「うぇー、向こうは、なんて言ってきた?」
『質問されたのですが、『太宰のような人間は、やっぱり失格なのでしょうか?』とは、何を聞かれているのか、本当に分かりません』
って、返事がきた。
「よく、返事がきたわね」
返事がきたのには、理由があるんだ。
「どんな?」
ラブレターの最後に、
『返事ちょうだいよ。文学少女じゃないの?』
と、書いたからなんだ。
クロイツェル・ソナタの女の人は、南山大学文学部独文科にいたから、
『文学少女じゃない』
なんて言われたら、カチンとくるわけだよね。
「えっ、文学少女? 文学? 太郎さん、文学の話したかったの?」
そうだよ。
「じゃあ、全然、伝わってない」
どういうこと?
「多分、あの手紙を読んだら、その人は、自分と太郎さんとの間の恋愛について、聞かれたと思ったはずよ」
それで、いいんだけどね。
「でも、太郎さんは、太宰の文学とか、漱石の文学を、クロイツェル・ソナタの女の人と、語り合いたかったんでしょ」
私、今、本当に幸せ。
あの当時、できなかった、こういう文学の話を、麻友さん相手に、今、実現できてるんだもの。
「そうかー。太郎さんは、前も言ったけど、女の人と、触れ合いたいのよね。だから、自分達の恋愛を肴に一杯やるというようなことを、夢見てたのねー」
まあ、そういうことだね。
「だったら、前にも一度話題にしたけど、キャバレー式クラブ、つまり、キャバクラへ行ったら良かったのに。話し相手になってくれたはずよ」
麻友さん。それ、本気で言ってるの?
「う、うーん」
でしょう。
「太郎さんは、キャバクラには、行かないわね」
麻友さんも、分かってるじゃん。
それに、お金で買った愛じゃない。
麻友さんと私も、ボーヴォワールとサルトルのような、何でも話せて、知的な二人になろうよ。
ボーヴォワールとサルトルが、できなかったことが、一つあるんだ。
「子供を作れなかったこと?」
おっ、いつもの特待生、冴えてる。
「どうして、ボーヴォワールは、子供を産めなかったの?」
実は、身籠もったことは、あったんだ。
だけど、サルトル以外の男の人とも交渉を持ってるから、誰の子か分からないし、ボーヴォワール自身が、子供を育てたいと思わなかったので、中絶したんだよね。
「太郎さん、どうして、Wikipediaにも書いてないような、そんな私的なことまで、知ってるの?」
これは、前、話した、大学の女性学の英語の授業で、ボーヴォワールの話題になったとき、先生が、
『私も、ボーヴォワールが、中絶するって時は、『中絶反対!』って、運動したものでした』
って、話してくれたから、知ってることなんだ。
でも、現代の科学を用いれば、子供を授かる、授からない、男にするか、女にするか、全部コントロールできる。
いや、昔だって、賢い人達は、産む産まない、産み分け、などを調節してたんだろう。
後、多くの人と交渉を持って恐いのは、エイズや梅毒などの性感染症。
ここまでくると、量子力学(りょうしりきがく)をそのまま、化学に応用した、量子化学(りょうしかがく)に基づく生化学(せいかがく)では、守備範囲外となる。
いきなり難しい言葉が出てきたけど、これこそ麻友さんと私が、このブログで、解明しようとしていることだ。
「どこまで、本当にできてるの?」
化学や分子生物学の本として、出版されるのは、それが発見されてから、5年以上経ってからだから、本当の最先端で、生命というものが、どこまでコントロールできているのか、私にも、分からない。
ただ、少なくとも、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)をブタの受精卵に注入し、人の細胞が交ざったブタの胎児を作ることに、成功しているそうだよ。
「いつのニュース?」
今日(2017年1月27日)のニュースらしい。
「太郎さん、どうやって、こういうニュース見つけてくるのよ?」
気にして見ていると、結構、引っ掛かるんだよ。
「じゃあ、私と太郎さんの子供を作るときも、あっ、ごめん、まだ、そういうこと考えられない」
うん。いいんだよ。そういうふうに、女の人が、待ってって言ったとき、男の人が待てるようじゃなきゃ、いけない。
「おんなって、おとこのひとみたいに、頭だけで考えるのって、苦手なのよ」
感情と思考が、クロスオーバーするんだろうね。
「でも、そもそもの話のもとの、あのラブレターは、どんな答えを期待してたの?」
太宰が、失格だ。というのなら、それでもいいし、太宰は、失格じゃない。というのなら、それで良かったんだ。
とにかく、名古屋と京都で、文通したかったんだよ。
「太郎さん。それは、明治の恋愛だわ」
文通って、あの頃は、まだあったと思うけどな。
「たとえ、スマートフォンも、携帯も、インターネットもなくても、電話はあったでしょう」
そりゃあ、もうプッシュホンの固定電話は、あったよ。
「だったら、電話すべきよ」
女の子と電話で話すなんて、恥ずかしいなぁ。
「もーっ、ほんっとに、手がかかるのね」
そうかー。向こうは、電話したり、会いに来てくれるのを、待ってたのか。
「当たり前でしょ。太郎さん、おかしいんじゃない?って、おかしいんだった」
私が、おかしいって、気違いみたいなことを考えるって意味じゃなく、100年くらい前の人間の思考様式をしているってことなのかい?
「色々おかしいのよ。今それに気がついたけど、他にもまだ太郎さんが気付いてないことが、いっぱいあるのよ。さっきのお金がなくなったときのことは、どうするの?っていうのには、どう答えるの?」
この、お金の問題なんだけどね、ものすごくドラスティックに、改革したらどうかと思うんだ。
「ゲームじゃないんだから、ドラマティックにやる必用は、ないわよ」
(劇的に)じゃなくて、(徹底的に)だよ。
そこにかんでくるのが、太宰治。
「どう関係があるの?」
クロイツェル・ソナタの女の人から、意味が分かりません、なんて言われて、私は、大学の図書館行って、太宰治について、調べたんだ。
「何か分かった?」
ある文献に、チラッと、
『太宰の『斜陽』という小説は、純粋無垢の処女と思って、駆け落ちまでして結婚した女性、小山初代(おやま はつよ)が、実は他人の手垢にまみれていたことを知った悲しみも手伝って、書かれたものだろう』
と、書いてあったのだ。
これを、読んだときの私の落胆ぶりは、この1行のことを18歳のとき以来、忘れず覚えていて、26年後の44歳の6月30日に、
『人を軽蔑するなら、まずその小説を読め』
と思って、『斜陽』を読み始めたことに表れている。
「何を、落胆したの?」
女の人を処女かどうかで判断するなんて、太宰って、下らない男だな。と、残念に思ったんだよ。
そんな下らない男の書くものなんか、読んでやるか。と思って、太宰が大文豪なのは知ってたけど、『人間失格』『走れメロス』『犯人』の3作読んだきり、1行も読まなかった。
「私は、処女だけど、処女かどうかに、女の人の価値がかかっているとは、思えないわね」
そうだろ。
ただ、馬鹿なことを考えた人もいたんだ。
もう死んじゃったけど、田中澄江(たなか すみえ)という女流作家がいた。
「明治の人?」
違う違う。昭和の人。一流の作家と言っても良かったと思う。
「どうして?」
外国の絵本を訳していたからなんだ。
「有名なの?」
うん。これ。
アンデルセン『マッチうりの少女』
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「どうして、これを訳していると、一流の作家と言えるの?」
実は、NHKのドキュメンタリーで、司馬遼太郎(しば りょうたろう)を取り上げたとき、文系だった司馬が、たとえば『坂の上の雲』で戦艦『三笠(みかさ)』のことを書く場合、いきなり専門書は読めないので、子供向けの図鑑なんか、例を上げると、
軍艦メカニズム図鑑―日本の戦艦〈上〉 (軍艦メカニズム図鑑)
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などをまず読んで、見当を付けてから、難しい文献に向かっていたと、紹介されていたんだ。
そして、
『子供の図鑑なんかは、一流の学者が書くから、結構信用できるんだ』
と、司馬遼太郎が言っていたと、ナレーションが流れた。
私は、それを、応用しただけ。
「つまり、絵本を読むような、小さな子供のためのものは、ものすごく大切につくられているはずだから、田中澄江さんも、一流だと」
そういうことだね。
母が、だんだん記憶が不確かになってきちゃって、麻友さんに聞かせられるかどうか、分からないけど、母は、幼稚園に入るより前に買ってもらった、『シンデレラ』の絵本を、完全に暗記していた。
これ、
- 作者: 加藤まさを,西条八十
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「どうして、これだと分かるの?」
母が、完全に暗記できた理由が、これが、西條八十(さいじょう やそ)という当代きっての大詩人の訳だったからなんだよ。
「でも、1956年じゃ、お母さま、小学校卒業しちゃうわよ」
アマゾンって、古い本に関しては、あてにならないんだ。
「インターネット万能という神話は、新しいことだけね」
多分今ならまだ、母の、シンデレラ節を聞けるんだけどなあ。
「どうして、お母さまの小さいときのことまで、みんなが知ってるの?」
その本自体が、まだあるし、母が、幼稚園に入る前に、停電になったとき、真っ暗な中で、母が、
『ご本読みましょ』
と言って、本を開き、読めるはずないのに、
『小さな、小さな、シンデレラ』
と、読んでいったのを見て、私に取って祖父、母にとって父の、おじいちゃんが、
『お前は、暗くても本が読めるんだなあ』
と、感心した。というのは、25年くらい前に、母から聞いた。多分、何度か聞かされたのだろう。良く覚えている。
「小さいときのことって、本当に重要ね」
いや、そんなこと言ってるけど、人間が、試験を受ける年齢。普通だと、大学院の博士課程を受ける24歳から25歳くらいまでは、人間の脳は、場所こそ違えども、成長している。
これは、私の経験から言っても、ウソじゃないと保証できる。
「その後は、人間は、駄目になる一方?」
そんなことはない。先日の湯川秀樹は、1907年生まれだ。物理学の研究をしていたが、ノーベル賞受賞の理由になった、中間子(ちゅうかんし)という粒子を予言したのは、1935年だ。
「じゃあ、28歳。もう下降気味のはずなのに。でも、論文を発表したのは、1935年でも、アイディアはもっと前からあったのかも」
その仮説は、棄却される。なぜなら、1933年に、朝永振一郎が、湯川秀樹宛に送った書簡の中に、後に湯川ポテンシャルと呼ばれるようになる、 という式があるから、26歳よりも前に、中間子論は有り得ない。
「なにその、朝永から湯川への書簡って。太郎さん、どうして、そんなの知ってるの?」
その理由も、麻友さんなんだ。
「私?」
一昨年(2015年)、麻友さんのコンサートに行かれないように、入院させられそうだ。と思った私は、先生に面会に行くとき、入院した場合読もうと思って、『スピンはめぐる』という本を、持って行っていた。
この本。
- 作者: 朝永振一郎
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「この中に、書いてあったの?」
そう。
「わー、すごい。入院中に読み終えたんだ」
そんなに、易しい本じゃない。
「えっ、まだ読んでる?」
そう。湯川ポテンシャルの話は、2017年1月10日14時42分頃、知ったと書いてある。
「わぁ、18日前。太郎さん、知ったことできたてほやほやのまま、私に、話してるのね」
だから、麻友さんが、いなきゃ駄目なんじゃない。
「つまり、25歳過ぎて、少ししてから、才能の爆発はあるのね」
麻友さん。神様からもらった才能。大事にね。
「それで、一流の作家の田中澄江が、何を考えたの?」
『かしこい女性になりなさい』という本の中で、
『自分は、童貞以外とは、結婚するまいと、思ってきた。なぜなら、女を知っている男なら、性病を持ってるかも知れない。私は、そんな男は、いやだ。ずっとリトマス試験紙を付けたときのように、一発で童貞かどうか分かるといいな、と思ってきた。私の夫は、つきあい始めた最初の手紙で、女の人と遊んだことはありません。と、証明してくれたので、安心だ。淑女なら処女でいて、童貞と結婚しろ』
と、書いてるんだ。
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続・かしこい女性(ひと)になりなさい―本当の幸せをつかむために (PHP文庫)
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- 出版社/メーカー: PHP研究所
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「太郎さんは、それ読んで、どう思ったの?」
ああ、男の人が、
『処女がいい』
っていうのは、病気が恐いからか、と一時、誤解してた。
「誤解が解けた後は、どうなの?」
麻友さんが、処女なのを、
『どっかで、捨ててきなさい』
なんて、失礼なことは、言わないけど、ほんっとに、麻友さんのこと好きだから、処女かどうかにかかわらず、麻友さんと結婚する。
「太郎さんは、処女かどうか、こだわらない。処女を重んじる太宰を軽蔑する。何が言いたいの?」
ゲノム編集という技術(遺伝子を好きなように書き換えられる技術)を、人類はもう手にしているって話は、したよね。
「そうだったわね」
だったらね、もう、誰が誰の子っていうのやめろっての。
「ゲッ、それはまた、極端な」
だから、ドラスティックにやるって言ったじゃない。
「言ったけど、そんなことしたら、家族が、崩壊するわよ」
だから、古い価値観で、どうしても、解決できなかったことを、ドラスティックに、徹底的に、解決しよう、と言ってるんだ。
「つまり、その考え方で行くと、もうお金というものの価値も、変わるということね」
さっすが、特待生。
「じゃあ、お金稼ぐのは、意味のないこと?」
そんなことはない。お金を稼ぐ力がある、ということは、その仕事のスキルを持っているということの証明だ。
問題なのは、親がお金を持ってたから、こんなに幸せに育った私と、親がお金を持ってなかったから、学校にもろくに行かれなかった子供とが、できてしまうことだ。
この場合、我が家よりも裕福で、幸せそうに育った家族や、貴族や華族のようなひとを、どうするかは、私も良く分からないので、取り敢えず置いておいて、まず、息も絶え絶えな人から、救わなくては、ならない。
「そこで、『私も良く分からないので』と、はっきり書くところが、太郎さん流の誠実な文章なのね」
ドラスティックなんだから、いずれ手を付けるけどね。
とは言うものの、もう、結構疲れた。
「太郎さん。自分で、いつも言ってるけど、私達は、もうしばらく、この状態よ。慌てることないわ。今晩完全に答えを出さなくても、いいの」
そうだね。太宰のことから始まって、随分、文学も物理学も、冒険した。
「太宰治も、太郎さんに、プレゼントくれたじゃない」
プレゼント?
「自分が、明治の人間だって、気付かせてもらったじゃない」
あれは、太宰の功績か?
「自分の業績も全部、相手のものにして、花を持たせてあげるんでしょ」
そうだった。忘れてた。太宰も役に立つな。
「おやすみ」
おやすみ。
現在2017年1月28日5時42分である。おしまい。