現在2018年12月31日19時06分である。
「太郎さん。財布にいくら入ってる?」
えっと、2,160円。
「もーっ、それじゃ、若菜と結弦のお年玉も、あげられないじゃない」
正直言うと、今、ほとんど、収入がないんだ。
「どうして? お父さまの本のリストは?」
最近、私に、外で働かせようとか考えていて、リストくれないんだ。
「じゃあ、私が、ミュージカルやったら?」
生活費を、切り詰めて、なんとか切符を買うしかない。
「太郎さんは、外で働く気は、ないの?」
私が外で働こうという努力は、これまでも何度も試みられた。しかし、どれも、上手く行かなかったんだ。
今、私に出来るのは、非常に突飛な思いつきだけど、あの医学機器を、本当に実現可能だと言うことを、理論的に示すことで、世界に新しい考え方を提案することなんだ。
「でも、夏遊んでた、キリギリスが、助けてくれって、来てもね」
あっ、そんなこと、言えるのか?
麻友さんに投じられた票は、すべて、麻友さんを応援しようという、ヲタク達の、心を込めたものだったはずだぞ。
「ああ、それを、言われると、辛いわね。でも、太郎さんは、どう見ても、キリギリスよ」
結弦「お母さん。結婚する前から、大晦日に、夫婦げんかですか?」
若菜「お父さん。なんで、こんな記事にするんですか?」
ごめん。若菜。大晦日に、お母さんが、ブログ更新して、
『
去年までは、
年末年始といえば
一年で、いちばん慌ただしく
いちばん忙しい時期でしたが
今年は
それとは正反対な
時間を過ごしております。笑
』
と、言ってきたんだ。
今まで、ずっと、お母さんに、こういう、のんびりした時間を、味わわせてあげたいと、思ってきたお父さんとしては、ひとつやり遂げたことが出来たんだよ。
若菜「素直に、『良かったね』って、言ってあげられないんですか?」
結弦「お父さん。僕たちに、お年玉くれられないんで、しょげてたんだな」
「まあ、いいわ。私、ガロア、少し用意してきたのよ」
おお、じゃあ、始めてよ。
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最も簡単な分解は,ガウス氏の方法によって,得られる.
この分解は,方程式の群の形から見て明らかだから,それを説明するのは時間の浪費だ.
ガウス氏の方法で簡単化されない方程式に対しては,どのような分解が適用されるのか?
ガウス氏の方法で簡単化されない方程式を,僕は,原始的と呼ぶ:このような方程式は,実際に分解不可能というわけではない.累乗根で解けるものさえある.
累乗根で解ける原始方程式の理論への準備として,1830年6月に 誌上に発表した「数論について」という論文で,虚数についての考察をしている.
ここに同封した論文では,次の定理を証明している:
(1)原始方程式が累乗根で解けるためには,その次数は でなければならない, は素数.
(2)このような方程式の順列は,すべて
という形をしている. は,それぞれ, 個の値をとる 個の指数で,それによって,すべての根が指定される.これらの指数は法 で考える,すなわち,指数に の倍数を加えても,指定される根は同じだ.
この一次形の置換を,すべて施して得られる群は,全部で 個の順列を持つ.
一般の場合には,このような条件を満足するからといって,その方程式が累乗根で解けるとは結論できない.
誌上で指摘しておいた,方程式が累乗根で解けるための条件は,あまりに強すぎる.例外がある,稀にだが.
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「どうかしら」
分からないなりに、よく、 化したな。
「一カ所、気付いたのよ。
(p.8,l.7)
◯これらの指数は法 で考える.
✕これらの指数は法 で考える,
点と丸を、付け間違えてるわ」
良く見つけたな。
結弦「ガロアの遺書は、7ページある。やっと2ページ進んだね」
若菜「お父さんには、どのくらい分かってるんですか? この見ているノートは、いつのものですか?」
1999年1月30日に、この本を、全文写しし始めたものだ。
若菜「1999年ということは、京都から戻ってきて、4年半も経っていますが」
実際は、私の記録では、1994年10月24日、1995年6月12日、1998年12月2日にも、読み始めている。
しかし、挫折している。
若菜「1999年のノートは、最後まで続いたのですか?」
いや、2018年4月24日に、第17章の294ページまで進んだところで、中座している。
結弦「一気に読んじゃえば良かったのに。もう半分越してるのに」
そうだな。
もっと頑張って、お前達に、分かり易い説明を出来るようにするか。
「太郎さん。この得体の知れない遺書を読むの、どういう姿勢で読めばいいの?」
色んな、数学の記号や用語を、こんなものがあるんだなあと、眺めていると良い。
先に進んだとき、昔あんなことやったなあ、と思い出すのは、楽しいものだ。
「それだけのため?」
数学って、膨大な無駄の上に、築かれてるんだ。
これが、役立つかなあ、と思っていたら、数学はできない。
でも、楽しく、無駄なことをやるのなら、人間は耐えられる。
私からのラヴレターと思って、読む、あるいは、書き取るというのなら、心が違うだろう。
来年も続けよう。
「太郎さん。今年も終わるから、最後に言うわ。私、AKB48を卒業して、ファンも減ったわ。でも、太郎さんは、確実に、コアなファンの一人よ。来年もよろしく」
若菜「中学2年に、ガロア理論なんて、滅茶苦茶ですけど、お父さんの数学への情熱に押されて、来年も頑張ります」
結弦「平和憲法の話とか、今年、色々面白かったよ。お母さんと仲良くね」
じゃあ、みんな元気で、解散。
「太郎さん。誠実という言葉の価値が、少し分かってきたわ。誠実に数学をやる、ということの難しさも、少し分かってきた。これは、数学という学問の入り口に立ったということなのね」
そんな言葉を、麻友さんの口から聞けて、私は感無量だよ。
麻友さんは、女優としても、歌手としても、もうプロだ。普通に考えれば、十分食べていかれる。
その麻友さんが、数学なんて、普通に考えたら、必要ない。
でも、学問には、麻薬のようなところがある。
麻薬は、使いようによっては、大きな効果を生む。
しかも、数学という麻薬は、違法ではない。
きっと、麻友さんと私の大切な架け橋になってくれる。
そして、医学機器作らなきゃね。
「じゃあ、よいお年を。おやすみ」
よいお年を。おやすみ。
現在2018年12月31日22時08分である。おしまい。