現在2016年2月6日21時25分である。
「こんにちは」
いらっしゃい。
「前回の、右手がどっちか、という話は、何も得るところがなかった気がするわ。」
そうかなあ。
「今日は、もっと楽しい話をして。」
あれを書き終わった後にね、私は、こんな本を、読んだんだよ。
「けんろん?」
そう『圏論の歩き方(けんろんのあるきかた)』っていう本なんだけど。
「圏論って、何かの理論なの?でも、歩き方って変ね。」
うん。これは、今すぐ説明できる内容のものでは、ないんだけどね。
この『圏』っていうのは、英語では、category(カテゴリー)って言うんだ。
「範疇?」
そう。さすが、優等生は、違うねえ。普通、カテゴリーって言ったら、範疇(はんちゅう)って、訳すんだけど、実は、自然科学、特に数学の文脈で、カテゴリーと出てきたら、範疇と訳すと、誤訳なんだ。
数学の文脈では、カテゴリーは、必ず、圏(けん)と、訳す。
「数学では、『カテゴリー』=『圏』なの?圏って?」
これは、一言で言うと、集合が、いーっぱい集まったもの、みたいに思えるものなんだ。
そして、この集合からあの集合へ、というように矢印を向けたりする、その矢印の使い方のことを調べるのが、圏論なんだ。
「それで?」
実は、日本語の本で、圏論の良い本がなかったというのもあって、使われる分野によって、圏論の方言みたいなものができちゃってる。
それで、異分野協働をするには、どうしたらいいか、ということが、テーマになっている。
「何を、話したいの?」
ここで、やっと話したいところへ来たんだけど、こんなことが、書いてある。
・異分野協働においては当然,各人の知識を共有することが第一歩.
・しかし知識には2種類あって,「これはぼくの知識であって、研究するときに使っているなあ」と自分で意識できている明示的知識(explicit knowledge)だけでなくて,「ああ,自分では意識していなかったけど,言われてみればたしかにぼくはそれ,使っているね.当たり前になっちゃってた」という暗黙の知識(tacit knowledge)がある.
・このうち暗黙の知識のほうが当然伝えるのがむずかしいし,さらに多くの場合,暗黙の知識のほうが大切だったりする.
これ、言ってる意味、分かるよね。
「なんだか、文系の人間からすると、あたりまえなことを、理系の人は大問題にするのね。」
文系の人にとっては、当たり前?
「だって、違う文化の人と触れ合うことを、考えれば、異分野協働のもっとすごいことをやってるんじゃない。」
確かに、新しいことでは、ないのか。
「でも、それに新しい方法があるっていうのなら、それはそれで、いいでしょうけどね。」
うん。
説明が、ややこしくなったけど、私としては、私自身の暗黙の知識も、麻友さんに伝えようとしているんだ、と気付いた、ということなんだよ。
「気付いたって?」
この『女の人のところへ来たドラえもん』というブログは、私の幼いときからの科学体験を追体験することで、私の科学の知識をほとんど全部、麻友さんに伝えようとしていた。
私は、暗黙の知識なんてものがあるとは、知らなかったけど、分かってみたら、やりたかったのは、これだったと気付いたってこと。
「アハハッ。」
「それが、言いたかったのね。」
「その本の一歩先を行ってた、と言いたいわけね。」
そこまで言う気はないけど。
「まあ、いいわよ。」
「今日は、そろそろ幼稚園に入るのかしら?」
そうだね。
私の最初の数学的体験は、前回話した、右がどっちか、というものなのだけど・・・
「えっ、あれが、数学なの?」
『右がどっちか』ということは、数学的にも、物理学的にも、今後、何度も、考えるテーマなんだよ。
最初に種明かしするという精神に従うと、
・数学的には、右左が対称かどうか、座標系が右手系か左手系か、曲線が右回りか左回りか、など繰り返し出てくるし、
・物理的には、スピンという恐ろしく込み入っていて、私も制覇できていない概念に関連して、なぜこの地球の生命は、すべて、左巻きのアミノ酸と、右巻きの糖でできているのかを解き明かすことにつながる発見が待っている。
というわけなんだ。
「アミノ酸とか糖っていうのは、興味あるわね。」
でしょう。麻友さんが少しでも親しみを持てるように、考えているんだよ。
「そういえば、ワンダエクストラショットの糖類0gというのを、ゼロのわけないって書いてたわよね。あれは、どうして?」
そこ、ものすごく大事なことだから、幼稚園すっ飛ばして、話しておこう。
実は、この世界の、麻友さんも、私も、二人をつないでいるこのインターネットのLANケーブルも、全部のものは、小さい、小さい、原子というものが集まってできているんだ。
「それは、太郎さんから、何度も聞いたことね。」
そう。何度も言って、慣らしていってるんだ。
ただ、麻友さんは、その、
『小さい、小さい』
というのが、どれくらい小さいか、分かっていないんだ。
実は、麻友さんと一緒に読んでいこうかと考えた本の候補に、
『ファインマン物理学』
という本があるんだ。
非常に素晴らしい本で、この本を読んでないのに、物理学科を卒業しましたとは、恥ずかしくて言えないだろうと思っているくらいの本なんだけど、私が、この本で進めるのを諦めたのは、レヴェルが高すぎたんだ。
この前、やっと説明して、計算だけ取りあえずやってみせた、積分などを、平気で、最初から使うから、挫折が目に見えていたんだよね。
「ああ。積分ね。でも、そのうち説明してくれるんでしょ。」
もちろん。
その途中でも、麻友さんが、力を付けて、この本が読めるようになったときのために、ここにリンクを張っておくよ。
英語版は、もう無料で読めるんだ。
「えっ、青空文庫なの?」
そう。こんな人類の財産が、ただで読めるなんて、ネット社会は、すごいよ。
日本語の訳本を見ると、5冊あるから、あれ、太郎さん忘れたかな、と思うかも知れないけど、原書は3冊だったんだ。
さて、そのファインマン物理学のファインマンというのは、人の名前なんだけど・・・
「えっ、知ってる。朝永さんのとき、出てきた。」
良く覚えていたね。やっぱり、若い人はいいなあ。
「確か、1965年なのよ。朝永振一郎、シュウィンガー、ファインマンが、ノーベル賞もらったのは。」
優等生ぶり、全開じゃない。
「と、ここで、話したことで、脳の知識が、上書きされたわ。」
そう。その好循環。
さて、そのファインマン物理学の第1巻の第1章は、
という題で、日本語訳では、
『躍るアトム』
という題になっている。
「アトムってカタカナで書くと、『鉄腕アトム』みたいね。」
麻友さん。分かってくれる?
私が、どれだけ物理学でつまずいているか。
「えっ、どういう意味?」
私は、幼稚園の後、やがて小学校に入るわけだけど、小学校5年生の頃、相対性理論への興味から物理学を学びたくなって、父が持っていた、1967年の初版の『ファインマン物理学』を開いたんだ。
「えっ、小学校で、もう物理学、勉強始めてたの?」
始めました。でも最初に、何につまずいたか?
『躍るアトム』
という題を読んで、
『鉄腕アトムのつくり方から書いてあるのかな?』
と思ってしまったのです。
第1章。一所懸命、理解しようとして読んだけど、まったく分からなかった。『アトム』という言葉が、『鉄腕アトム』だと思っていたからね。
「わぁーっ。信じられないっていうか、もったいないというか。」
この本は、分からない本だと思って、大学に入るまで、読みませんでした。
本当に、今でも、残念です。
さて、その因縁の第1章に、次の一文があります。
麻友さんが、後で、前後関係を確かめられるように、英文で、引用します。
「どうして、最近、英文を、載せるの?」
私の英語の勉強のためというのもあるけど、麻友さんが、少しでも、英語の力をつけられるように。
アイドル活動で忙しくて、
『もっと英語も勉強したいのに。』
と思ってるかも知れないからね。
私も、色々な場合を考えているのよ。
私が、歴史上最高の数学者でもない限り、統合失調症という障害を持っている以上、結婚して妻子を養うなんてことは、無理なんだ。
私が、まだ24歳くらいの頃、新横浜のデイケアに通っていたとき、専門のワーカーさんが講演をして、
『女の人が、結婚して、家庭に入ったのを、自立してないと言いますか?あなた方、精神障害者は、経済的自立以外の道を考えて下さい。』
と、はっきり言ったのですよね。
あれは、ウソじゃなかったと思う。
麻友さんは、今の私を見るから、
『十分働けるのではないか。』
と、思うだろうけど、一昨年までの私は、毎日、眠くてしょうがなかった。
そして、常識的に考えた場合、麻友さんと結婚しても、助けてもらうことになる。
そこで、私の学力が、ものをいうわけよ。
麻友さんの、英語の勉強を手伝って、麻友さんが伸びたことで、収入が増えたのなら、私も、働いたことになる。
そこまで、計算した上での、英語の勉強よ。
数学者だけあって、確かに計算はできるな、と思うでしょう。
さて、今日の英文は、
が、のこと。つまり、点の両方合わせて、が8個、並んでいることであるのを鍵にして、
原子というものの大きさを、ものすごく分かり易いたとえで、話しているんだけど、分かる?
まず、という単語を知らないと、辛いね。これは、『半径(はんけい)』だよ。
だから、1番上の行は、
『原子は、から、くらいの半径です。』
となる。
これは、今、分からなくていい。
女の人の力は強いね。もっと書くつもりだったけど、麻友さんが、ツイッターで、
「みんなちゃんと暖かくして寝ましょう~」
というから、寝ることにしたよ。
この続きは、次回ね。
「おやすみ~」
おやすみ。
現在2016年2月10日1時26分である。おしまい。