現在2016年2月16日22時07分である。
「昨日は、ブログは早く止めたけど、私にツイートしてきたのは、4時47分だったわよ。」
さすがに、麻友さんも、最近は、言葉ではなく、数字で、物事を捉えるようになってきたね。
「褒めたって、ごまかされないわよ。どうして寝られないの。」
簡単に言うとね、面白い数学の問題が、解けかかっているとき、そのままにして眠ろうという気になれないんだ。
「じゃあ、昨日、また、数学やってたの?」
麻友さんとの会話って、ある意味、数学の問題と同じくらい、私には、楽しいんだ。
「でも、私は、昨日の3時、4時には、寝てたけど。」
ツイッターで、お父さまとのこと書いたでしょう。
「書いてきてたわね。」
麻友さんとお父さまのことを想像して、二人の会話を思い浮かべて、あのツイートに結実するまでの過程を楽しんでるんだよ。
「でも、現実は、大分違うわよ。」
現実と違うということは、分かっているんだ。
でも、私の心の中にできあがった麻友さんのイメージは、現実の麻友さんが元になってできたものだから、まったくめちゃくちゃじゃないんだ。
「分かってるけど、太郎さんの妄想している渡辺麻友は、私とは、ものすごく違ってるのよ。」
大丈夫なんだよ。
二人が今すぐ結婚するのなら、問題も起こるだろうけど、二人が『お手手をつなぐ』のが、2年後で、結婚式は、さらに先でしょう。
二人の間の溝を埋める時間は、いっぱいあるんだよ。
「じゃあ、今は、何をやっているわけ?」
共通の思い出を、いっぱい作っているんだよ。
「共通の過去か。そういえば、昨日は、広島の高校の編入試験に落ちたという話だったわね。」
お互いに、情報交換しなきゃね。
不合格になったよ。
「でも、広島で高校へ行ってたって、言ってたわよね。」
うん。さっきのは、私立だったんだ。
県立高校の編入試験を受けて、今度は、受かった。
「それで、広島から、京都へ、という道が開けるのね。」
単身赴任というのは、辛い。
なぜ、それが、分かるかというと、私の父というのは、非常に優秀な技術者であると共に、内面的にもかなり完成された人だったんだ。
その父が、三次に行っていたとき、
『お昼ご飯のお弁当が、楽しみなんだ。』
と言ってきたんだよね。
母が、慌てて、
『お父さん、可哀想だ!』
って言って、三次に行ったのを今でも覚えている。
前から、私は、本当に幸せな家庭に生まれたんだ、と話しているけど、こういうところにも、それが、現れているでしょう。
普通、単身赴任のご主人が、
『お昼のお弁当が、楽しみだ。』
と言ったとしても、奥さんは、
『美味しい、お弁当が出てるのね。』
ってなもんだよ。
でも、あの、ある意味気難しいほどの父が、仕事中、お弁当だけが楽しみになっているとしたら、これは、異常事態なのだ。
下手をすれば、若い社員に、心を奪われかねない。
まあ、これは、私の場合の心配材料かも知れないけど・・・
とにかく、その危険信号を、見落とさないのが、私達家族の、素晴らしいところだったのだ。
「でも、そんな家族だったのに、どうして、太郎さんは、統合失調症なんかになっちゃったの?」
これは、多分、麻友さんと私が結ばれて、二人できちんとしたことができるようになったとき、初めて原因が分かることなのだと思う。
「太郎さんは、今でも、私と、結ばれると、信じているの?」
もちろん。
「身を引くことは、できないのかしらね。」
さて、広島の話は、自慢話のために、持ち出したんじゃない。
実は、次の話をしたかったからだ。
麻友さん。麻友さんは、日本のあちらこちらで、コンサートやってるけど、コンサートの場所によって、日没時刻が違うというのに気付いたことあるかな?
「あっ、それある。コンサートの時間っていうのは、普通決まっているんだけど、特に野外ステージの場合、北海道と沖縄では、空が全然違うのよね。」
気付いてたか。
実は、高校2年生の春に、広島井口高校へ、転校して、春は気付かなかったんだけど、秋になって、
『あれっ?』
と思ったんだよね。
普通、
『秋の日はつるべ落とし』
というくらいで、秋はすぐ日が暮れるんだけど、広島では、夕方遅くなっても、子供達が外で遊んでる。
中学校で、科学部天文班だった私は、気付いたんだよね。
『広島は、東京より、西にあるから、日没が遅い。』
本当に、30分近く。理科年表で見ると横浜より広島が28分日の入りが遅い。
「えっ、でも、なんで、そんなことが、起こるの?」
そこが、今日のポイントじゃない。
「ポイント?」
地球が、まるいってこと。
「エーッ、どういうこと?」
地球がまるいから、順々に明るくなって行って、順々に暗くなって行くんだよ。
「あーっ、でも、それに合わせて時刻を進めるわけには行かないの。」
もちろん、地球規模では、各場所で、時刻が違う。
でも、日本国内では、兵庫県明石市にある標準子午線の真南を太陽が通るとき、12時と決めて、日本全国一律に、それで計っているんだ。
「つまり、私達のコンサート時間も、学校の開始時間も、深夜バスの時間も、すべて東京でのものの、押しつけなのね。」
そう。東京に首都があるというのが、日本全体に影響を与えているんだね。
ということも大事なんだけど、地球の大きさを実感するのが、目標なんだ。
「どうやって?」
麻友さんは、広島へ行ったことがあるとは言っても、飛行機でだろうけど、新幹線で行ったどこかで、思い浮かべてね。
広島は、さいたまより、日没が28分遅い。つまり、大体30分遅い。
もっと西の地点を思い浮かべていって、360度地球を回ったら、元に戻るわけだから24時間経ったわけだ。
「それ、論理的に正しいの?」
厳密に言うと、元に戻るから24時間だ、というのは、論理的にギャップはある。でも、これが、ギャップだと認めた上で、推論を進めよう。
360度が、24時間ならば、何度が30分に相当するだろう。
「あっ、それくらいなら、分かるわ。360度を48で、割れば良いのよね。」
さすが、AKB48の人!
「太郎さんのようにやるには、まず360を12で割るのよね。」
そう、そう。
「そうすると、30になる。これを、4で割るのよね。」
完璧に、吸収してる。
「15割る2は、7.5だから、30分に相当するのは、7.5度ね。」
お見事。
それで、思い浮かべて欲しいのが、まるい地球の7.5度ぶんが、さいたま広島間の距離だ、ということ。
というより、さいたま広島間の麻友さんの感覚を、48倍すると、地球の全周になる。
「ああ、分かった。選抜総選挙の順位の関係で、16の倍数は、分かるのよ。地球ってさいたま広島間の48倍か。少し分かった。」
そこで、だめ押し。
「えっ、?」
今、麻友さんの手の中に、直径5cmのりんごがあったとして、それを、48倍で分かった、地球の大きさまで押し広げたとき、押し広げたりんごの中の原子は、大体、押し広げる前のりんごくらいの大きさだよってこと。
「あーっ、うん。言いたいことは、大体分かった。つまり、1オングストロームという長さを、肌で感じられるようにしてくれたわけね。」
えっ、原子に、麻友さんの肌に触ることを許したの?
「なに、バカなこと言ってるのよ。私の体だって原子なんでしょ。」
その、返球でいい。
よし。これで、『躍るアトム』のりんごの話、おしまい。
最後にもう一回、復習しておいて。
読めば読むほど、ファインマンの文章は、深い意味が隠されていることが分かってくるんだ。
『原子は、から、くらいの半径である。』
『という長さを、(別名)オングストロームと呼ぶ。』
『そこで、原子は1ないし2オングストローム(Å)の半径であるといえる。』
『これらのサイズを思い出せるもう一つの方法が、これである:』
『もし、りんご1個を、地球のサイズまで、押し広げたとする、』
『そうすると、押し広げたりんごの原子の大きさは、大体、』
『押し広げる前の元のりんごの大きさくらいである。』
じゃあ、今日は、0時くらいに寝るよ。
「毎日、そうしなきゃ、だめよ。」
分かっているんだけどね。
「バイバイ」
バイバイ。
現在2016年2月17日0時08分である。おしまい。