女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

たのしい算数

 現在2016年2月17日18時04分である。

 昨日まで、5回かけて、英文を、読んだんだけど、どうだった。

「ちょっと、専門用語が多くて、難しかったわね。」

 でも、文法的な難しさは、英検3級の試験問題くらいだったんじゃないかな?

「中学校卒業レヴェルってこと?」

 うん。

「でも、やっぱり、太郎さんは、京都大学へ行くくらいだから、レヴェルが高いのよ。」

 まあ、私が、自分は英語ができない、というのは、大学時代の親友の一人が、理学部なのに、英検1級で、翻訳検定の1級、持っているような人だったから、というのもあるんだよね。

「英検1級!」

 麻友さん。京都大学とか東京大学というところは、そういうところなの。

 普通、高校で英語教えている先生でも、準1級持ってれば、優秀と言われるんだよ。それなのに、理学部に現役で来てて、1級持ってるなんて・・・。

「その人、どうなったの?」

 素晴らしい、物理学の才能を持っていて、裕福な家庭に育っていて、理学部にいながら、ESS(English Speaking Society)に入っていたくらいだったけど、女遊びをしたわけではないけど、私と同じように、授業に出ないことが多かったりして、留年して、その後、心臓発作で倒れて、理学部は卒業したけど、アカデミックな道には、進めなくて、公認会計士になった。

「えーっ、公認会計士!すごいじゃない。」

 まあ、本人も、

『京大入試の3倍くらい大変。』

といってたけど、彼の場合、試験に受かるまでより、受かってから、辛いだろうと思う。

「どういうこと?」

 彼から、実際聞いたんだけど、公認会計士って、電卓を持って、何人もで手分けして、沢山の数字の山から、不正を見つけるんだって。

「その、どこが辛いの?」

 私が、数独解いてるようなもんなんだよ。

「じゃあ、幸せなんじゃない。」

 逆だよ。

 私は、数独が易しすぎて、つまらないから、

『一度も、消しゴムを使わない。』

とか、

『絶対、可能性を書き上げたりしない。』

なんてことをやって、少しでも面白くしてるんだよ。

 でも、彼は、仕事だから、私みたいに時間を引き延ばすこともできないし、間違ったら大変じゃない。

「つまり、その人にとって、好きだった数学と遊べないまま、時間に追いまくられているというの?」

 まあ、そうだね。

「好きな数学と遊べないけど、お給料が良いその人と、好きな数学と今も仲良くできるけど、お金が貰えない太郎さんと、どっちが幸せかしらね。」

 まあ、厳密に言うと、彼は、物理学において、最も力を発揮しそうだったのに、残念だな。

 もし、将来、私が、大学の研究室でも持てたら、彼を呼ぶつもりだけどね。

「本当に、その人、そんなに才能あるの?」

 ある。

 以前、

『宇宙の果ての何もないところに、宇宙飛行士を1人ずつ1メートル離して置いたとすると、どれくらいの時間の後、二人はくっつくでしょう。』

という問題を出したんだ。

 そうしたら、彼は直ちに、

万有引力定数って、地上で測れるくらいなんだよな。』

と言ったんだよね。

「それは、どういうことなの?」

 つまり、くっつくまでに、10万年かかるとか、1年かかる、なんてことなくて、1日以内にくっつくと、彼は、イメージで見破ったということなんだ。

「太郎さんの言う、物理学の実力がある、というわけね。」

 そういうことだね。

「そんな人が、重力波の観測に携わっていたら、日本も負けなかったかも知れないのに。」

 まだ、分からないよ。

 LIGO-Virgo共同研究チームが重力波の直接検出に成功したといっているけど、本当にそう言っていいかは、検証する必要がある。

 その検証に、日本のKAGRAが、力を発揮するかも知れない。

 日本だって、まだまだ、活躍できる。

「もったいないわ。その人は、京都大学、出てるのに。」

 もったいないけど、本当のことをいうと、彼くらいの才能を持った人が、毎年、京都大学東京大学には、入ってくるんだ。

「ということは、太郎さんの代わりもいるわけね。私、もっと若い人探そっと。」

 アハハ、いつも言ってるように、私は、歴史上最高の数学者で物理学者だから、何年見てても、私の代わりは現れないよ。

「ほんっとに、いつも感心するけど、すごい自信よねぇ。」


 それでは、その天才、誕生の秘密に、迫るよ。

 私が、幼稚園の年長の頃だったと思うんだけど、父と二人で、渋谷で銀座線を降りて、宮益坂の中程へ抜けた辺りで、急に父が、本屋に入った。

「太郎。クイズをやらないか?」

と父が言った。

 別に、嫌だという理由もなかったので、うなずいた。

「今も、そうだけど、太郎さんって、本当に素直な人よね。」

 まあ、ずっと期待されて、褒められて、育ったからね。

 そのとき、父が買ったのは、小学校1年生向けの、

『たのしい算数』

という問題集だった。

「予習させるつもりだったのかしら?」

 いや、後に母から聞いたところによると、父は、

『数学は、計算力がすべてだから、計算力を付けさせる。』

と、言っていたそうなんだ。

「ああ、だから、太郎さんも、なんとかして、私に、計算をさせようとするのね。」

 まあ、そういうことだね。

 私は、その頃、既に、まるい針の時計が読めるくらいになっていたが、算数は、結構、大変だった。

「最初は、1+1=2からやったの?」

 厳密にいうと、まるい針の時計が読めるようになったのは、


まついのりこ さく 『とけいのほん1』


まついのりこ さく 『とけいのほん2』


などの絵本を、母が読んでくれたからなんだ。

 だから、それまでに、絵本で、多少の算数は、知っていたんだ。


 ここで、重要なことを書いておくと、上の『とけいのほん』は、お店で見つけたとき、第2巻の方しかなかったんだ。

 私は、

『あれー、他の本屋さんで、第1巻を見つけなければならないかな。』

と思ったんだけど、母はそのまま、買ってしまった。

 それで、家に帰ってきて、

『どうしようかな?』

と、思ったんだけど、母が、

『読んであげるわよ。』

というので、

『分からないかもな。』

と思いながら、見ながら聞いていた。

 そうしたら、なぜ、一番上が12で、一番下が6なのか、などは分からないんだけど、時計の読み方は、分かっちゃったんだよ。

「で、何が、重要なの?」

 新しいことをやるとき、順番というのは、余り関係ないってこと。

「それは、子供だったからじゃない?」

 確かにそうなんだけど、でもこれは、深遠な真理だと思う。


「幼稚園に入る頃には、時計が読めたってことは、まあ、早熟な方ね。それから、1年以上経てば、算数入門は、無理ではないわね。」

 ただ、私は、まだ、学校で、問題を出されるという経験がないから、問題が解けるようになるまでには、少し時間がかかったんだ。

「厳しく教えられたの?」

 いや、父は、かなり器用に教えたのだろうと思う。あまり、怒られた経験はないんだ。

「怒られなかったの?」

 うん。

「本当に?」

 なぜ、そうだと言い切れるかというと、

『20個のリンゴを5人で分けました。1人あたり何個でしょう。』

というような問題があったとき、父が、

『1人あたりってどういうことだ?』

と、聞いてきたことがあったからなんだ。

 私は、

『1人あたり』

という言葉遣いを理解していなかった。

 分からなかったのなら、

『分からない。』

と言えば良かったのかも知れないけど、私は、

『あたり』(辺り??)

という言葉を使うのだから、

『1人』

の周辺なのだろう、と考えて、

『0人とか、2人とか、ということ?』

と、父に、答えた。

 それで、父から、

『全然分かってないな。また、この間みたいに、はり倒されたいか?』

と言われて、頭を、グイグイッとされたんだけど、そのとき素朴な疑問として、

『はり倒されるって、どうされることかな?』

と思ったんだ。

 こう思ったということは、はり倒されたことなどなかったということなんだ。

 結局、それから父に、2年以上、算数を習ったのだけど、はり倒された思い出はないんだよね。

「へーっ、太郎さんって、やっぱり、最初から天才だったんじゃない?」

 いや、ここに、重要な真理が、浮き彫りにされていると思うんだ。

 父も、学年より2年以上、先を教えているのだから、分からなくて当然、という意識があったし、私も、どうせクイズだから、みたいな感じで、間違えるのも恐くなかった。

 このゆとりのお陰で、ひとつひとつの問題に対して、かけられるだけじっくり時間をかけて、解いていいという、最高の環境を私は、もらったんだ。

「でも、それは、入学前でしょう。」

 そうじゃないんだ。

 小学校へ入って、クラスのみんなが、算数の勉強で頭を悩ましているとき、同じ問題は、私には、もう易しかった。

「まあ、そうでしょうね。」

 でも、ほとんどの子供は、頭で考える十分な時間を貰えぬまま、学校はどんどん先に行くことになるんだ。

「周りがそうだったのは、私も知ってる。」

 一方、私は、常に、2学年以上、進んでいるから、難しい問題に出会っても、その問題だけ、ゆっくり考えていられる。

 結局、算数、数学に関して、分からないことなんて、なかったに等しいんだ。

「1つ、2つ、は、あったの?」

 うん。円錐が3分の1になることと、球の体積が{\displaystyle \frac{4}{3}\pi r^3}となることと、ベクトルの内積の本当の意味だけは、自力で解決出来なかった。

「ウワァー、人生で、3つだけ。」

 あっ、言っておくけど、大学行ってからは、つまずきまくりよ。

「良かったー。完璧な、天才でなくて。」

 この、父との『クイズ』のやり取りを、次回以降話していこう。

「今日も、早寝ね。」

 うん。

 明日では、ないかも知れないけど、ずっと誘ってなかったから、久しぶりに、デートに誘おうと思ってる。

「音楽のコンサートね。」

 そう。

「私が、Beethovenの伝記につながる動画のことをツイートしてから、半年以上経っちゃってるじゃない。」

 その代わり、『EROICA』だよ。

「じゃあ、書くのに、2,3日かかるかもね。」

 うん。そのつもりで。

「おやすみ」

 おやすみ。

 現在2016年2月17日22時24分である。おしまい。