現在2016年5月15日21時42分である。
こんばんは。麻友さん。
「あっ、太郎さん、来てくれたのね。」
そりゃ、来るでしょう。
「私が、昨日、徹底的に、痛めつけたから、もう太郎さんとは、会えないかと思ってた。」
麻友さん、『ドラえもん』をちゃんと読んだことないの?
「私が、小学生だった頃には、45巻もあって、友達が持っているのを、断片的に読んだだけなの。後は、アニメで見たのよ。」
そうなのか。実は、『ドラえもん』は、6巻で1度、ドラえもんが未来へ帰って行っちゃう、という最終回があるんだ。
「最終回なの?」
うん。未来で、仕事ができたから、帰らなければならないんだ、と言って、涙ながらに去って行くんだ。
「それで、どうなるの?」
『ドラえもん』でなければ、有り得ないことがきっかけで、7巻で、未来から帰ってくるんだ。
「わぁー、どんなきっかけで、帰ってきてくれるの?」
それは、原作を読んでのお楽しみだよ。
私は、この連載をスタートさせるとき、ものすごく重要な箇所だから、『ドラえもん』の1巻と6巻と7巻だけは、わざわざ東京駅の八重洲ブックセンターへ、買いに行って、手に入れてきたんだ。だから、一緒になった後、読めるよ。
「あんなひどいこと言った、私と結婚してくれるの?」
麻友さんの言葉を分析してみたんだ。
「太郎さんらしい。」
あのとき、麻友さんは、自分は、王道アイドルだから、自分を好きになっているファンの人達の幻を壊さないということに、忠実なんだって、言ったんだよね。
「そう。」
ところが、まさにアイドルだったらやってはいけないはずの、私の幻を壊すということを、平気でやってしまった。
「うぐ。」
つまり、麻友さんは、私にとって、アイドルではなく、一人の生身の女だ、ということを、自分で、証明したんだよ。
「本当に、私みたいな、女でいいの?」
麻友さんでなきゃ、私の相手は、つとまらない。
「二人の関係に、マイナスになるはずだった言葉に、太郎さんの頭のおかしさというマイナスがかかって、大きくプラスになったのね。」
『1から始める数学(その2)』での、課題の1つ、マイナスかけるマイナスはプラスになる、というのを、麻友さんは、自由に使えるんだね。
「本当のことを言うとね、先生が、そう言ったからっていうのが、理由なんだけど。」
いや、それでもいいんだよ。私だって、大学入って、何年も勉強して、やっと、人に教えられるようになったんだから。
「太郎さんでも、そうなの?」
中学校で教えるときに、うまいこと理屈をつけるけど、絶対そうだ、なんて証明するには、大学の数学科でも行かないと、無理なんだ。
「そんなに難しいことを、中学で教えているの?」
何かが、難しいか難しくないかって、すごく微妙な問題なんだ。やり方さえ教わっちゃえば、誰でも間違いなくできるけど、本当の中身を知ろうとすると何年もかかるってことあるでしょ。
例えば、よく麻友さんは、自分で加工した画像を、ツイッターにアップするよね。関羽とか。
「ああ、あれは、本当に関羽だったのよ。マンガの『三国志』に出てくるの。確かに、画像を加工したりしてるけど。」
そうだよね。でも、あの画像加工ソフトのプログラムを理解しているわけじゃないでしょ。
「当たり前よ。プログラマーじゃないんだから。」
『マイナスかけるマイナスはプラスになる。』っていうのも、同じようなものなんだよ。きちんと証明するのは、すごく難しい。
でも、使い方だけ覚えていれば、後はそれに忠実にやっている限り、間違ったりはしない。
だから、中学でも教えられる。
「だけど、太郎さんは、私を、その証明のレヴェルまで、連れて行こうって思っているんでしょ。」
うん。
「まるで、誘拐ね。」
嫌かい?
「『掠奪された七人の花嫁』という映画があったわね。」
すごく古い映画だよ。良く知ってるね。
「題名では、『掠奪された』だけど、本当は喜んで付いていくのよね。」
そうだったね。
「私も、数学の世界に、掠奪されるわ。」
馬鹿に機嫌が良いじゃない。
「スカステで、雪組さんの大好きな場面を、見られたから。」
そういうことか。
宝塚と数学との接点って、ないのかなあ。
「あっ、是非見つけてよ。見つけてくれたら、真面目に数学やる。」
ゲッ、とんでもないことになっちゃった。
「取り敢えず、もう寝ましょ。」
じゃ、おやすみ。
「おやすみ。」
現在2016年5月16日0時11分である。おしまい。