現在2016年9月7日23時07分である。
「前回は、数学の話だけで、終わったわね。」
余計な文章があると、疲れるだけかな、と思ってね。
「確かに、余り長い投稿は、読むのが疲れるわね。」
ドラマの話や歌の話がメインでなく、数学や物理学の話がメインの時は、それだけに集中しようと思う。
「分かったわ。」
「それで、今回の話は?」
(ゼロ)を、作る。
「を、作るって?は、元々あるんじゃないの?」
だって、我々は、を定義して、とで、やを、作ったじゃない。
「分かった。は、と、定義するんでしょう。」
かなり、良い線行ってる。
それに近いことを、もっと厳密にやるんだ。
「これ以上に、厳密に?」
どういうことをするかというとね、だけじゃなく、負の数も含めて、整数全体を、定義しちゃおうと、思っているんだ。
ところで、麻友さんは、座標って、知ってる?
「座標って、関数のグラフを書く時の、目盛りよね。」
良かった。覚えてて。
「の点の座標は、座標は、で良いのよね?」
そう。その通り。
今から、平面の座標が、自然数の点に注目する。
「とか、とか、とか、などね。」
良く分かっている。
じゃあ、麻友さんを特待生と見込んで、高級な質問。
問題
次の写真にあるように、傾きがの同じ直線上にある点どうしを結びます。このとき、同じ直線上にある点どうしには、どういう関係があるか、答えなさい。
ヒント
例えば、と、は、同じ直線上にありますが、と、には、共通な何かがありますか?
「もだし、もね。前の数から後ろの数を引くと同じになるものが、同じ直線上に並んでるんじゃない?」
そう。そのキレ。
なぜそれを、思いつけたのか、自分でも分かってないけど、とにかく正解を思いついちゃう、特待生、麻友さんのキレがあってこそ、進軍できる。
「でも、どうして、傾きの直線上の点どうしは、引いたものが、同じになるのかしら?」
こういうことなんだよ。
今、点と、点が、傾きの同じ線の上にあるとしよう。
傾きが、ということは、の場合、からまで方向に増える量で、方向に増えた量を割ったものが、ということなんだ。
だから、
であり、よって分母をはらって、
となる。
の場合は、両方が順番逆になるだけで、
となる。
どちらにしても、最後に、
と、移項するのは、簡単だね。
これを、見れば、座標から、座標を、引いたものが、同じになることが、証明できてる。
「それで、こんなことを調べて、何をしたかったの?」
麻友さんが、今まで想像したこともないことを、やって見せようと思ってるんだ。
「『最初に種明かしします』の精神に則って、きちんと説明すると?」
同値類による類別という、大学レヴェルの数学の話題を話そうと思う。
「難しいの?」
定義だけ聞くと、何言ってるか、さっぱり分からない。
でも、具体例を、いくつも知ってからなら、ほとんど当たり前のことに思える。
そして、非常に便利で強力な手段なんだ。
「必要なの?」
大学になるまで数学で出てこないということは、これなしでもかなり数学ができるということだ。
「じゃあ、やめましょうよ。」
さっきも言ったように、非常に便利で強力な手段なんだ。
これを使うだけで、モヤモヤしていた霧が晴れる。
「私に、分からせてくれるなら、聞きましょう。」
そうこなくっちゃ。
やりたいことは、整数を作ることなんだ。
「普通なら、という自然数に、を付け加えて、後は、っていうように、自然数にマイナスをつけたものを、加えれば、整数よね。」
「どうして、これじゃ駄目なの?」
麻友さん。私達にとって、例えば、『』って、どういうものだった?
「えっ、『』?・・・あっ、思い出した。『』のことだったわね。」
「そうすると?」
この書き方で、『』を、書ける?
「だから、やっぱり、『』と、したら?」
そう。そのやり方を、貫くことも、できる。
例えば、『』。つまり、『』とやれば良い。
間違えたやり方ではないから、矛盾は出てこない。
「だったらいいじゃない。」
でも、小さい数から大きい数を引くことを、定義する前から、それを使っている。
自分が、正しいことを証明するのが、難しい。
つまり、整数の定義がであることを、証明しにくい。
「ああ、この前の、ウェルなんとかね。」
ウェルデファインド。
「ここでも、それが出てくるの?」
大学の数学では、めったやたらと現れる。
「それに、私を、慣らそうというわけね。」
実は、そう。
「もう。いいわ。結論を言いなさいよ。どうやって、整数を作るの?」
こうやるんだ。
例えば、と、は、どちらも、座標から、座標を引いた数が、だったね。
だから、この直線上の点を、全部合わせて、この集合を、整数の世界での『』だと定義するんだ。
「ちょっちょっと、待ってよ。何がですって?」
この斜めの線上の座標が自然数の点、全部の集合。
「じゃあ、というような、無限個の要素からなる集合を、だっていうの?」
そう。
「それだったら、なんかは、どうなるの?」
だから、の乗っている直線上の点の集合は、整数の世界でのとなる。
「それは、言ってることの意味は、分かるけどね。そんな集合を、やにしちゃうのは、抵抗あるわね。」
そこで、抵抗があるのはね、計算を実際にやってみないからなんだよ。
「どう、計算するのよ。集合なのよ。」
集合だと思うから、気持ち悪いんだよ。
1つやってみよう。
の入っている集合は、さっきの約束で、整数ののことだったね。だから。
それから、
の入っている集合は、さっきの約束で、整数ののことだったね。だから。
「うん。うん。」
ここで、2つを足してみよう。
「どうやって?」
そのまま、足しちゃえば良いんだよ。
「えっ、こういうこと?」
うん。どうよ。
「あっ、そうか。だから、確かに、の方と、一致してる。これって、まぐれ?」
「のわけないわよね。こうなるように、作ってあったのね。」
図星。足し算の定義が、になるように、うまーく仕組んであったんだよ。
「でも、太郎さんは、を作るって、言ってたじゃない。」
もう、分かるんじゃないかなあ。
「あっ、そうね。分かったわ。という集合を、整数でのと、定義するのね。」
さっすが、特待生。
「私は、ただの優等生じゃないの。特待生なの。だから、こんなことも、できるわ。」
「マイナスの整数は、例えば、は、なんていう集合と、定義すれば良いんでしょ。」
お見事。
これで、整数が、定義できた。
数学の普通の本だと、ここで、自然数での足し算が、整数でも拡張された形で成り立つ、とか、マイナスの数が、ちゃんとであること、とか、かけ算は、とか、色んな事を書き並べておきながら、問いとして、『これらを、証明しなさい。』となっていることが、多い。
こういうことをされると、読んでいる方は、やる気がそがれるし、そんな問いを一回は解いても、役に立つかも知れないけど、同じような問題を、何問も解いても、身につくものはない。
だから、麻友さんには、以下のことを注意するだけで、整数構成は、終わりとする。
今、整数を、考える。
これは、定義により、
という集合だ。
そして、麻友さんが、見つけたように、
整数は、
である。
つまり、マイナスをつけると言うことは、座標と座標を、交換するということだ。
ここから、麻友さん。重要なことに気付かない?
「マイナスのマイナスは、プラスってこと?」
そう。さすが、特待生。
「うーん。でも、マイナスかけるマイナスが、プラスになるっていうのは、微妙に違うような・・・」
さすが、鋭い。
これは、マイナスかけるマイナスが、プラスということの証明ではない。
そもそも、私達は、自然数のかけ算も、定義してないものね。
「そうよね。私達、自然数の引き算も、かけ算も、もちろん割り算も、定義してないわ。」
うん。ただ、そういうその他もろもろは、メインストリートを、オスカルの乗るような、馬車で、堂々と行く時には、路傍の花として、放っておいても困らないものなんだ。
麻友さんには、自分の数学を作ってね、と言った。
結局、細かいところをどこまで丁寧にやるかは、それぞれの人のキャパシティの問題なんだ。
「じゃあ、私が、もっと細かくやれるだけの容量があったら、丁寧にやれば良いし、容量がなかったら、大体こうだろう、で、すっ飛ばして良いということ?」
数学って、実は、そういうものなんだ。
「他の分野ならともかく、数学まで・・・」
これは、こういう風に前向きに捉えるといいんだ。
『私は、今、数学の、この部分が、知りたい。そのためには、他のことを、どこまで知っていれば良いか。その必要なものだけを、研究しよう。』
数学、全部を知る、というのは、そう簡単にはいかない。
だったら、一番、好きな数学、やりたい数学、を研究した方が、精神衛生上よろしい。
麻友さんと私は、物理学に応用する、数学をやりたい。
1から始める数学は、その基礎を据えた。
そして、ついに、を作るところまで、来た。
これで、お役御免である。
「今、思い出したんだけど、大学で出てくる概念を、1つ話してくれるって言ってたじゃない。」
ああ、同値類による類別ね。
傾きの直線上の点を、ひとつひとつ集合にしたでしょ。あのひとつひとつの集合に分けることを、同値類に分ける、って言うんだ。
「ただ、それだけ?」
今回は、具体的な場合だったから、分かっただろうけど、もっと複雑な場面になると、当たり前ではなくなる。
この1回の投稿の中にも、後に必要になる概念の、分かり易い具体例が、いっぱい含まれているんだ。
「私には、全然、分かり易くなかったけど。」
それは、申し訳ない。
「次回は、どんな話?」
ちょっと、考えさせて。
なるべく、面白い話題を見つける。
「じゃあ、おやすみ。」
おやすみ。