女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

整数環(その3)

 現在2018年1月9日16時30分ある。

「えっ、整数についてやったときのことって、ほとんど、忘れちゃってる」

 そうだろうね。私も、良く覚えていない。

「説明してる、太郎さんからして、そうなの?」

 例え数学であっても、全部の証明を覚えているなんてことは、できない。

 いくつか、鍵になることだけ、覚えているんだよ。

「どれが、鍵で、どれが、鍵じゃないか、教えてよ」

 もちろん、教えるようにしている。

 『定義』とか、『定理』とか言って、まとめたものは、鍵のことが多い。

「でも、忘れちゃった」

 いいんだよ。1回で、覚えようとするより、何度もやって、当たり前になっていった方が良い。

「それで、今日の話は、どこから、始めるの?」

 『整数環(その2)』では、麻友さんにせがまれて、公理的集合論の説明を、始めた。

「どんなこと、やったっけ?」

 『{\forall}(エニ)』とか『{\in}(要素)』とかやったの、覚えてない?

「やったかしら?」

 まあ、いいや。

 公理的集合論の話をするのは、私は楽しいが、麻友さんに負担が大きい。

 それより、数学の基礎になってる小学校の算数で、いくつか話しておきたいことがある。

「どうして?」

 『AKB48小学算数』をやっていて、公理的集合論やっても、この問題集、解けるようにならないな、と思ったからなんだ。


 具体的に言うとね、このテキストを見つけて、私の算数と比較してたんだ。

安浪京子『小学校6年間の計算の教え方』(すばる舎

「比較してどうだったの?」

 この本の方が、より良い方法のこともあるけど、私の方が、計算しやすいな、ということも、いくつかあったんだ。

「それは、聞いてみたいわねぇ」

 でしょ。だから、『安浪京子VS松田太郎』をやってみようというわけ。

「うん。それなら、面白そう。やって、やって」


 小学校の場合、まず、正の整数の足し算から。

 例えば、{3+5=} なら、いくつだっけ?

「もちろん、{8} ね」

 そう。両手の指で数えられる数ならば、指を折って数えられる。

 そもそも、10本の指を折るところまで、1,2,3,4,5,6,7,8,9と、数字を知っていないと算数は、始まらない。

「それは、そうね。でも、小学校に入る前から、それは、もう知ってたわ」

 うん。幼稚園でも教えるし、NHKの教育テレビ、今のEテレでも、何度も教えている。

「9の次、10なんだけど、0をどう習ったのかしら?」

 私も、『0』というのは、昔、インドで発見されたんだ、とか言われながら、いつの間にか、10と書けるようになった。幼稚園に入る前だ。

「幼稚園に入る前?」

 うん。幼稚園の頃、大好きな蒸気機関車の絵をクレヨンで描いていたとき、母に、

『光の速さってどれくらい?』

と聞いたら、

『37万キロだったかしら?』

と言われたので、蒸気機関車の上に、

『370000キロ』

と書いたのを、覚えているんだ。

「えっ、37万キロだっけ?」

 いや、もちろん、秒速30万キロなんだけど、母の科学の知識って、あんまり当てにならないんだ。

「そうやって、370000キロなんて書けるということから、10くらいの数は、とっくに使ってたのね」


 光の速さにたとえるのは、誰でもおんなじだね。

「あの絵のことでしょ」

 うん。この絵、笑っちゃった。

f:id:PASTORALE:20160419081112j:plain

「光の速さに到達することは、できないのよね、相対性理論によると」

 一応、そういうことになっている。『相対論への招待』も、次を書かなきゃね。

「太郎さん、書かなきゃいけないこと、いっぱいあるのよ」

 そうだね。


 さて、足して10以下の足し算なら、問題ない。

 次に、十指に余る計算。

 例えば、{7+9=} というようなのは、どうする?

「それは、9に1を足すと10だから、7から1引いて6としたものと合わせて、16とするわ」

 それが、正解だね。

 安浪京子さんも、同じように、10を作って、計算する。と、書いてる。


 こういう計算ができる、ということの根拠は、なんだろう?

「根拠? どういうこと?」

 つまり、

{7+9=6+1+9=6+10=16}

と、計算できることを保証してるのは、何?

「あー、分かった。

{7+9=(6+1)+9=6+(1+9)=6+10=16}

の、

{(6+1)+9=6+(1+9)}

の部分ね。これは、足し算の結合法則ね」

 ここは、使っても良いでしょう。さすが、特待生!

「えー、でも、この計算に、足し算の結合法則を使ってるなんて、考えたこともなかった」

 そもそも、足し算をうんと習った後、結合法則を習うからね。

「そういえば、私たちが作っていた自然数で、足し算の交換法則は証明したけど、結合法則って証明したっけ?」

 いや、まだ証明してない。

 やっちゃおうか。

「できるなら」


 まず、私たちの自然数の足し算というものは、

{A=1+1+\cdots+1+1}

{B=1+1+\cdots+1+1}

が、自然数の時、

{A+B=(1+1+\cdots+1+1)+(1+1+\cdots+1+1)}

{A+B=1+1+\cdots+1+1+1+1+\cdots+1+1}

というように、1の列を継ぎ足すというものだった。



 これを用いて、次のように、証明を行う。



 定理 25    足し算の結合法則

 自然数{A,B,C} について、

{(A+B)+C=A+(B+C)}

が成り立つ。

 証明

 今、3つの自然数を、次のようなものとしよう。

{A=1+1+1}

{B=1+1+1+1}

{C=1+1}

 この時、

{A+B+C}

として、

{(1+1+1)+(1+1+1+1)+(1+1)=1+1+1+1+1+1+1+1+1}

を結果として与えることに定義すると、これは、

{(A+B)+C= \bigl((1+1+1)+(1+1+1+1)\bigr)+(1+1)}

と、同じであり、

{A+(B+C)=(1+1+1)+\bigl((1+1+1+1)+(1+1)\bigr)}

とも同じである。

 ここで、同じであるとは、つまり、1の並んでいる絵が、模様として同じであるということである。

 ただし、括弧『()』は、見る人のためにつけてあるだけで、自然数の絵としては、そんなものはないとする。

 そうすると、

{(A+B)+C=A+(B+C)}

であり、足し算の結合法則が、成り立つ。

 そこで、以後、

{A+B+C=(A+B)+C=A+(B+C)}

を、{A+B+C}の定義とする。

 定理 25 証明終わり



「これで、証明になっているの?」

 多分、麻友さんに取って、何が定義されていることで、何を証明しなければならないか、が、ごっちゃになっているんだと思う。

 今は、証明が分からなくても、悲観せず進んだ方が良い。数学が本当に面白くなるのは、大学に入ってからだから。

「えっ、数学って、大学行ってから面白くなるの?」

 それは、本当だよ。私は、高校時代から大学の数学をやってたってだけで。

「じゃあ、まず算数を片付けましょう」

 さしあたって、足し算の結合法則を、片付けた。


「あの、聞きにくいんだけどね、足し算の結合法則というのは、習うでしょ。でも、引き算の結合法則というのは、ないの?」

 うん。さすが特待生、聞きにくいことも、質問してくる。それでいいんだよ。

 まず、引き算というものは、私たちは、まだ定義してないけど、とりあえず知っているものとしよう。

「例えば、引き算だったら、{(9-3)-2=} みたいなのかしら?」

 結合法則が成り立つとすると?

「うーんと、{(9(-3-2)=} かしら?」

 計算してみて?

「えっと、

{(9-3)-2=6-2=4}

 もう一つは、

{9(-3-2)=9(-5)=4}

だから、引き算でも結合法則は成り立つんだわ」

 特待生だけあって、論理は一貫している。

 でも、引き算の結合法則は、成り立たないんだ。

「どこが、いけないの?」

 麻友さんが、一瞬戸惑った部分。

{9(-3-2)=}

の部分で、間違った推論をしてしまった。

「えー、あっ、でも、{9}{(-3-2)}の間に、足すも引くもないわね」

 そう。結合法則の括弧を動かすときに、

{(9-3)-2=9-(3-2)}

と、しなければならなかったんだ。

{9-(3-2)=9-1=8} だから、答えが違ってくる。だから、引き算の結合法則は、成り立たないのね」


 小学校の頃からの宿題、1つ片付けた?

「うん。すっきりしたわ」


 麻友さんが、AKB48を卒業してしまったから、動いている麻友さんを見ることは激減したね。

「前から気になってるんだけど、私、絶対太郎さんと結婚しなければ、ならないの?」

 そりゃ、絶対私と結婚してくれなきゃ駄目だよ。

「どうして? 独裁者でもないのに」

 だって、結婚してくれなきゃ、私、悲しむもの。

「でも、そういうファンの人達は、大勢いるのよ。私が、他の人を選ぶ自由は持てないのかしら?」

 高橋みなみさんが、その著書『リーダー論』の『おわりに』で、ファンの人『みんな』でなく、『ひとりひとり』をイメージできたから、今までやってこられた。と、書いている。

 麻友さんが、ファンの人ひとりひとりを大切にしたい気持ちは、良く分かる。

 ただ、他のファンの人と私とでは、1つ違いがある。

「えっ、違い?」

 他のファンの人と結婚した場合、よほどのことがない限り、その人は、麻友さんを独占しようとするだろう。

 それが、通常の結婚の意味だ。

「ああ、太郎さんは、以前の、ファンの人とデートする、という話をしてるのね」

 そう。

「でも、現実問題として、そんなことは無理よ。お金も稼がなきゃならないし」

 その根本の価値観が揺らごうとしているんだ。

「どういう風に?」

 以前から話している小林りんさんに勧められて『日経ビジネス』という雑誌を時々読んでるんだ。

「それで?」

 去年日本でも大幅な予算が付いて、量子コンピューターというものの開発がどんどん進んでいる。

 そして、ある試算によると、8年半後には、量子コンピューターのスピードがあまりにも速くなって、解けない暗号というものがなくなり、あらゆる仮想通貨が使えなくなるという。

「どうして、暗号が解けると、仮想通貨が使えなくなるの?」

 簡単に言うと、パスワードを管理しているパソコンをハッキングすることもできて、パスワードをかけることができなくなるからだと言ったら分かりやすいだろう。

「じゃあ、ビットコインとか、アマゾンギフト券とか、駄目になるのね」

 それですむと思う?

「えっ、クレジットカードも駄目?」

 銀行預金していたって、下ろされちゃうってことでしょ。

「そんな、現金持ち歩くの?」

 ところが、その一方で、たんす預金を減らすために、日銀が、5千円札と1万円札を、廃止しようと言い出している。

「それ、本当なの?」

 朝日新聞に載っているくらいだよ。

「じゃあ、経済は、どうなるの?」

 私が、前から言っているように、お金という概念が、本当になくなると思うね。

「お金という概念がなくなったら、本当に、ファンの人全員とデートする、なんてことが、可能になるというの?」

 それぞれの人が、もっと自分にとって本当に大切なものを守ろうとすれば、そういうことも、実現できると思う。

「結局、私の百万人以上いるファンの中で、それを説明してくれたのは、太郎さんだけだったのね」

 私たちにとっての結婚の意味は、こういうことだったというわけだ。

「他のファンの人達がどう思っているのか、知りたくもあるわね」

 ゆっくり、眺めてみたら?

「今日は、ありがとう。バイバイ」

 次回も、安浪京子さんとの対決を続けるよ。バイバイ。