女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

整数環(その4)

 現在2018年2月6日12時47分である。

 『安浪京子VS松田太郎』の2回目だよ。

「太郎さん。インスタグラム、始めたのよ」

 うん。今、ツイッター、チェックして気付いた。

「インスタグラムで、新しい記事のURLをコメントすると、他の人にもクリックされちゃうわね」

 もう、麻友さんからのクリックをカウントするのは、やめるよ。

 だって、麻友さんが、私のブログを見てるのは、ほとんど確かだもん。


「それで、小学校の計算は?」

 3桁の数の足し算に進む。

『計算の教え方』の本での話題だけど、『AKB48小学算数』から、問題を持ってこよう。

 第1番

AKB48劇場のお客さんは,おとといが248人,昨日が241人,今日が239人でした。3日間合計は何人ですか?


 麻友さんなら、どう計算する?

「まず、

  248
 +241
_____
  489

次に、

  489
 +239
_____
  728

とやって、答えのところに、728人、と、書くわ」

 合格だね。

 ただ、安浪京子さんは、下の桁から繰り上がりがあったとき、小さく1を書いて、計算すると良い、と書いている。

「あっ、それは、そうよ。私も1を書くようにしてる。パソコンだから、書けなかったの」

 そうなのか。

 私は、繰り上がりしたときは、覚えておいて、あえて1を書かないんだ。

 これには、小学校の時の授業風景が、重なる。

「どういうこと?」

 私が、小学校2年生の時、先生に当てられて、前に出て黒板でこういう計算を、書いたんだ。

 そうしたら、先生が、

『一カ所間違ってますね。繰り上がりの1が、書いてありません』

と言ったのだ。

 自分の計算に自信のあった私は、それ以来、

『絶対に1を書かないぞ』

と誓って、今日に至っている。

「あっはっは、太郎さん、根に持つタイプなのね。振ったら、一生恨まれそう(恐)」

 いや、それは、冗談じゃなく、恨むよ。

 あっ、恨むって言うか、悲しいというか、そんなこと、起こらないよね。

「どうだか。それで、太郎さんの解答は?」

 AKB48小学算数のその問題を、私は、暗算でやって、答えだけ書いている。

「そんなの模範解答じゃないわよ」

 よく、『数学のできる人の答案ほど省略が多い』、と言われるよね。

 ちょっと話は飛躍するけど、麻友さん因数分解って、得意だった?

「高校の初め頃に、出てくるのよね。公式が多いから、苦手だった」

 そうか。高校の数学で、つまずく最初の石なんだろうな。

 実は、大学受験を描いた、林真理子の『下流の宴』という小説があるんだけどね。その中に、因数分解の話が出てくるんだ。

下流の宴 (文春文庫)

下流の宴 (文春文庫)

「どんな風に、出てくるの?」

 第十章にね、


 珠緒は今、因数分解をしている。

{6x^2+11xy+4y^2}

 これはまず{y}を取り除いて考えていくのだ。

{6x^2+11x+4}」を、

{(3x+4)(2x+1)}」にし、最後に{y}をつけ加えていく。



下流の宴』単行本306ページより、数式を{\TeX}で打ったことのみ異なる。



とあるんだ。

 これ読んだとき、笑っちゃった。

「えっ、でも定石通りよ?」

 そりゃ、最初は、そう習うのかも知れないけど、すぐに、

{6x^2+11xy+4y^2=(2x+~~)(3x+~~)}

{6x^2+11xy+4y^2=(2x+y)(3x+4y)}

というように、穴埋め問題のようにして、1行で解けるじゃない。

「だって、太郎さんだって、2行、書いてるじゃない」

 私は、あらかじめ上の式のように、空白を残しておいて、暗算でそこに入るものを計算して、そこを埋めるから、計算は1行なんだよ。

「そんなの減点されない?」

 実際、減点されたことある。

 京都から戻ってきた後、東京大学受けるって言って、Z会やってたって言ったでしょう。

「3回、受験した話は、聞いたわ」

 その時、こんな因数分解の問題があった。

{2x^2-5xy-3y^2+x+11y-6=}

 解ける?

「あー、これ、一番いやなタイプだわ。こうやるのよ。

 まず、{x}でそろえるのよ。

{2x^2+x(-5y+1)-3y^2+11y-6}

 次に、{y}で、因数分解する。

{2x^2+x(-5y+1)+(-3y+2)(y-3)}

 ここからが、大変なのよ。{2x}{x}の組と、{-3y+2}{y-3}の組を、たすきがけっていうのやって、

{x~~~~~~~~~~~~~~~~-3y+2~~~~~\Rightarrow ~~~~x(-6y+4)}
   ✕             +
{2x~~~~~~~~~~~~~~~~~~~y-3~~~~~~\Rightarrow ~~~~~x(y-3)}

{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~x(-5y+1)}

と、ピタッと決めるのよ。そうすれば、

{2x^2-5xy-3y^2+x+11y-6=\{x+(-3y+2)\}\{2x+(y-3)\}}
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~=(x-3y+2)(2x+y-3)}

と、因数分解できるのよ」

 さすが、特待生だねぇ。解けるんだ。

「これは、疲れるから、余りやりたくないのよ。でも、配点が高いから、一問解くと、大きいのよね」

 Z会でさあ、この因数分解、暗算でやって、一発で答え書いたら、

『途中式を書きなさい』

って言って、5点くらい、減点された。

「暗算でできるわけないじゃないの、こんなもの! 本当は、どこかで、計算したんでしょ!」

 朝日新聞の星5つの数独くらいなら、まったく消しゴムを使わず、可能性を書き上げもせずに、1時間くらいで、きれいに解けるのと同じように、私には、因数分解できるんだ。

「どうやるのか見てるから、ちょっとやりなさいよ」

 やってみせようか。

{2x^2-5xy-3y^2+x+11y-6=}

だね。

 まず、解答欄に、括弧を2組書く。あいだは、かなり空けて。

{(~~~~~~~~~~~~~~~~~~)(~~~~~~~~~~~~~~~~~)}

 次に、2次の式の部分を因数分解する。

{2x^2-5xy-3y^2}

の部分。この部分が2通りに因数分解できるときは、後のことを良く考える。でも、ここが2通りに分かれる問題は滅多にない。

 問題文をにらみながら、

{(2x~~~~~~~~~~~~~~~~)(~~~~~~~~~~~~~~~~~~)}

と書く。

 頭を使いながら、

{(2x+y~~~~~~~~~)(x-3y~~~~~~~~~)}

と書く。

 後は、定数をどう分けるか。

 やってることは、たすきがけみたいだけど、分解するのは、ただの{-6}だから、ちょっと頭を回転させて、

{x}{11y}になるように、{-2}{3}かな?{2}{-3}かな?{1}{-6}かな?と、試して行けば、

{(2x+y-3)(x-3y+2)}

と、周りで計算しなくても、暗算で、できる。

「ウッ、本当に、暗算で、できる。信じられない。トライ式高等学院の一番優秀な先生も、こんな技、教えてくれなかった」

 それは、そうだよ。だって、横浜翠嵐高校で、この解き方したとき、京都大学の大学院の博士課程出てる数学の先生が、

『こんな解き方が、自分で思い浮かぶのか?』

と聞いてきたので、

『はい』

と言ったら、

『危険だな』

と言ってたくらいだもの。

「エッ、そんなレヴェルなの? 太郎さん、本当に、思い浮かんだの? いつなの?」

 この方法は、中学3年の時、思い浮かんだんだ。というより、実は、私は、この問題は、私がやったようにして解くものだと、思ってたんだよね。

「なんで、中学3年で?」

 私、数学を、ものすごく、自分のペースで、勉強してきたんだ。

 例えば、天体望遠鏡のレンズの倍率を知りたいから、入射光と屈折して入っていく光の角度を知りたくて、そのために光学の本を見たら、

{\displaystyle n=\frac{\sin{\theta_i}}{\sin{\theta_r}}}

みたいな式が、書いてあって、母に、

『なぜこのシンっていうのは、約分できないの?』

と聞いたけど、

『そのうち、習うわよ』

と、教えてくれなかったので、色々調べた。

 そのうち、三角関数というものだと分かったけど、例えば、60度とかじゃなくて、37度みたいな角度のサインが、どうやって求められるのか、知りたくなった。

 そんな中学3年生のある日、本屋さんで、高校1年生向けの、数学の問題集を、見つけたんだ。

 薄い問題集だったけど、高校の問題集だから、三角関数の加法定理とか、余弦定理とか、載ってるわけ。

 それを見た私は、この問題集やっていけば、37度のサインの値とか、求められるんじゃないか?と、期待したわけ。

 だから、母に頼んで、その問題集、3ランクあったんだけど、一番上のレヴェルのものを買ってもらったんだ。

「その問題集も、今でもあるの?」

 いや、さすがに、あれまではない。でも、赤いカヴァーの『特選級』とかいうレヴェルのだった。

「それで、37度のサインを、求められた?」

 原理的には、求められたんだろうけど、高校1年生で、私は、テイラー展開というものを知ってしまったので、加法定理をあえて使うことはなかったんだ。

「あれっ、中学3年生って、受験じゃなかったの?」

 私は、高校受験に関しては、ものすごく余裕があったの。だから、一応、鎌倉学園という滑り止めを受けさせてもらったのに、冬休みの頃、父が買ったNECのPC-9801VM21というパソコンと、当時はインクリボンなんてもので印刷してた熱転写プリンターを使って、『一太郎』のVer.2.1で、

『不合格通知』

なんてものを印刷して、封筒に入れていき、合格発表の日に、帰ってきて、

鎌倉学園、落ちたよ』

なんて母に言ったほどだったのだ。

「それは、悪趣味ねぇ。ドッキリなんて、あんな前からあったの?」

 ドッキリ番組なんて、ほとんど見たことないから、分からない。

 とにかく、暇だったので、高校1年の問題集で、まず『式の展開』、次に『因数分解』、と進んだ。

「解けるの?」

 問題集だから、説明はないから、解き方は、あまり分からない。

 でも、式の展開は、とにかく分配法則で、粉々にするだけだから、全部、解ける。

 因数分解は、その逆をやるだけなんだよね。

 そして、さっきの『危険だな』の問題に、出くわしたわけ。

{2x^2-5xy-3y^2+x+11y-6=}

 この順番に式が並んでるんだもの、最初の3つを因数分解するのが、道理だよ。

{2x^2-5xy-3y^2+x+11y-6=(2x+y)(x-3y)+x+11y-6}

 はて、ここからどうしたものか?

 ここで、私は、思い切って、{-6}を2つに分けて、{(2x+y)}{(x-3y)}に、それぞれかけて、うまいこと{x+11y}になるものを、見つけられることに、気付いたんだ。

「最初から、暗算で?」

 そんなことはない。初めは、いっぱい書いてた。

 ただ、特選級だから、難しいのが多くて、時間はあるからゆっくりだけど確実に解いて、いつの間にか、暗算でできるようになった。

「でも、その方法、他の人は、誰も知らないの?」

 そんなこと、あるわけないじゃん。

「えっ、知ってる人いるの?」

 計算の得意な数学者は、こうやってるはずだよ。

 だって、あのアーベルが、麻友さんみたいな、あっち行ったり、こっち行ったり、の見通しの悪い計算してたわけないじゃん。ガウスだって、オイラーだって、モチのロンだよ。

「あっ、そうか。でも、それは、やっぱり、才能なのかしら?」

 まず、計算が好きでないと、良い方法には、気付かないだろうね。

「太郎さん。計算好き?」

 興に乗って、巫女さんが神がかりの状態になったみたいになって、バーッと、ノート30ページくらい計算した後が、一番、

『生きてて良かったなあ』

と思えるほど、気持ちが良いんだよね。

 今までの人生で、10回は、ないんじゃないかなあ。そんなこと。

「太郎さんにとって、私と数学とどっちを選ぶ?となったとき、数学を選んだ方が、その後の人生幸せなんじゃないかしら?」

 麻友さん。そういう男の人の方が、いいんじゃない?

 麻友さんも、私を好きなのと同じくらい、お芝居のことが好き。

 私も、麻友さんと同じくらい、数学が好き。

 でも、お互い相手がそばにいてくれると、安心。

 それくらい、おしば・・・、思い出した!

「エッ、何? なに?」

 今日、TSUTAYAで、『アメリ』借りてきたんだよ。

「それはそうと、1月27日は、見られなかったの?」

 見られなかった、どころか、22時まで、リアルタイムで、見ましたよ。

「見てくれたんなら、伝わってるわね」

 麻友さんらしさ、というものが、さらにはっきり分かってきました。

「太郎さん、安浪京子さんじゃなくて、私と、戦ってたじゃない」

 一度、この因数分解の話を書いてみたかったんだ。

「じゃ、『アメリ』見てね。おやすみ」

 もちろん見るよ。おやすみ。

 現在2018年2月7日0時01分である。おしまい。