女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

超実数そして実数(その4)

 現在2022年9月16日18時36分である。(この投稿は、ほぼ3384文字)

麻友「太郎さん。頑張るわね」

私「そろそろ、真理のカメさんの、可算級善良超フィルターという名前が、気になり出しているだろう。何が、可算なのか、何が、善良なのか、何が、超なのか、フィルターって何? クェッションマークだらけだろう」

若菜「それは、最初の『真理のカメさん』の投稿以来、ずっと、謎のままです」

結弦「調べようと思っても、文献が、ないんだよな」

私「それは、申し訳ない。超フィルターという言葉が、出て来る本は、数少ないが、ある。例えば、

など。だが、私が学んで、至るところ書き込みだらけの、この本、

齋藤正彦『超積と超準解析』(東京図書)

は、絶版で、1万円くらいの値段が付いている。大学の図書館を利用できる人くらいしか、読めない状態が、続いている」

麻友「何とかしてよ」

私「この大切な本が、絶版になっているのは、無意味では、ないんだ。実は、この本の著者、齋藤正彦さんが、『飽和モデルは難しいから、広大モデル(こうだいモデル、広島大学では、ない)で、いいよね。飽和モデルのための善良超フィルターは、一般の場合は、証明を附録に回すよ』と、書いているのだが、その後数学基礎論が進んで、誰でも皆、飽和モデルを、使うようになり、『今さら、広大モデルか』という風潮になっているのだ。つまり、この本は、もう old-fashioned になっているのだ。旧約聖書は、歴史上最高のベストセラーかも知れないが、今さら、旧約聖書で、ウクライナの戦争が、治まるか? ということなのだ」

麻友「確かに今、太郎さんはその本を、持っているのね」

私「持ってる」

麻友「じゃあ、そのエッセンスを、ブログに上げてよ」

私「実は、齋藤正彦さん自身が、ネット上にある程度、上げている」

齋藤正彦さんによる要約

若菜「お父さん。熱心に見てるんですねえ」

私「知っているかも知れないが、放送大学の授業で、齋藤さんの授業、取ってる。それだけでなく、お手紙を書いたこともあって、励ましてもらっている」

27182818284590452.hatenablog.com

麻友「あっ、あの過去記事の先生」

私「超準解析の、『真理のカメさん』のアイディアは、大学3回生のときから、微積分を、分かり易くしようという試みで、ずっと続いている。齋藤正彦さんにも、励まされ、今に至る」

結弦「道理で、自信持って書いてるわけだ」


私「さて、ちょっと出てきたが、善良という言葉は、飽和モデルという言葉に、つながっている。『超積と超準解析』の附録に、『善良超フィルターの存在定理』というのが、確かにある。この本の古本が、高い理由のひとつは、この附録を読みたい人が、多いからだ」

若菜「それを、スキャンしちゃうとか」

私「確かに、11ページだから、スキャンすることは、できる。だが、本当のところを言うと、これは、{\kappa}(カッパ) を無限基数として、{\kappa} 級の善良超フィルターの存在定理なのだ。この本を、丁寧に読んでいくと、可算級の善良超フィルターの存在は、13ページにちゃんとある。まだ、善良という言葉の定義をしていないから、分からないだけである。善良という言葉の定義は、72ページである。ここまで、たどり着く前に、撃沈される人が、多いのではないだろうか?」

麻友「その、可算級というのと、{\kappa} 級というのは、どっちが、強いの?」

結弦「なんか、ウルトラマンと、仮面ライダーは、どっちが強いの? というレヴェルの会話に聞こえるけど」

私「ここは、キリッと、{\kappa} 級の、{\kappa} の一番低レヴェルな場合が、{\omega} 級、つまり可算級だ」

麻友「じゃあ、{\kappa} 級の方が、強いんじゃない。必要よ」

私「証明の都合上、高い基数が、必要になる場合も、あるけど、やってることは全部、可算級善良超フィルターの、真理のカメさんと、全く同じで、ある意味、高い基数の場合も証明してあるというのは、数学者の精神安定剤みたいなものなんだ」

若菜「ちょっと、お父さん。レヴェルが上がりすぎて、付いて行かれませんが、・・・」

私「ゴメン。気合いが入りすぎた」


麻友「そうすると、善良というのは、言葉通り、性質がいいわけなのね」

私「そう。もう少しいうと、『超積と超準解析』の12ページから13ページにかけて、


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 自由超フィルター

 1.1.11 定義

 {I} を無限集合,{\mathscr{F}}{I} 上の超フィルターとする.{\mathscr{F}} に属する可算個の元 {A_0,A_1,\cdots} で、{\displaystyle \bigcap_{n \in \mathbb{N}} A_n \notin \mathscr{F}} なるものが存在するとき、{\mathscr{F}} を自由超フィルター(free ultrafilter)と言う.

 注意

 これは慣用と著しく異なる用法である.普通,この条件をみたす超フィルターは、{\omegaー\mathrm{incomplete}}(訳せば可算級非完備)と呼ばれ,《自由》は《非単項》と同義である.我々が使うのはもっぱらこの種の超フィルターであるのに,この名称は長すぎるし、否定辞を含んでいるのも、気に入らない.それに,非単項で自由でない超フィルターは存在するかどうか分っていない.(ここに、脚注がある)こういう理由であえて慣用を破った.ほかの本や論文を見るときは注意を要する.

 脚注

 これはいわゆる可測基数の存在問題である.もしゲーデル{V=L} を仮定すれば可測基数は存在しない.


 研究者注


 説明の都合上、ひとつ命題を、飛ばす。後で、補うから、心配しなくて良い。


       注終わり


 1.1.13 命題

 自由超フィルターは単項でない.とくに {I} が、可算集合なら、逆も成立つ.

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 (以上、『超積と超準解析』の12ページから13ページの一部)


麻友「何が、言いたいの?」

私「善良という言葉は、出てこないんだ。後で、飽和モデルという、齋藤正彦さんのいう難しいものを、正当化する過程で、{\kappa} 級の善良超フィルターというものが、出てくるんだ。だけど、私は、13ページの『あえて慣用を破った』というのが、なんとかならないものかと、思ったんだ。齋藤正彦さんは、『我々が使うのはもっぱらこの種の超フィルターであるのに』と、言ってる。自由超フィルターというものを、この本の中の言葉で、慣用を破らないで、言いかえられないか?」

麻友「えっ、言い換える? 根拠は聞いたけど、どうやって?」

私「読んでいって、私は、74ページで、


 3.3.5 定理

 任意の自由超フィルターは可算級善良である.


という定理を、見つけた。最低レヴェルの可算級の場合だけ、自由超フィルターという言葉を、善良超フィルターという言葉で、言い換えられる。否定辞も含んでないし、長すぎもしない。それで、私は、可算級善良超フィルターという言葉を使い始めたんだ」

麻友「ネーミングの秘密を、聞かせてくれたのね。でも、今晩はもう、21時31分よ。取り敢えず投稿して、寝たら?」

私「分かった。細かい点は、次回補うよ。おやすみ」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

麻友「おやすみ」

 現在2022年9月16日21時33分である。おしまい。