女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

有理数体(その3)

 現在2019年6月27日4時37分である。

 『ホーキング&エリス』来月18日に発売されるらしい。

ホーキング&エリス『時空の大域的構造』(プレアデス出版)

時空の大域的構造

時空の大域的構造

  • 作者:ティーヴン・W・ホーキング,ジョージ・F・R・エリス,富岡竜太,鵜沼豊,クストディオ・D・ヤンカルロス・J
  • 出版社/メーカー: プレアデス出版
  • 発売日: 2019/07/18
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

 4,860円だ。

「太郎さんが、訳せなかったとは言え、ちゃんと、形になったのね」

「ちょっと、悔しい?」

 いや、今の私に、これを訳せるだけの能力がないのは、分かってるから、悔しさはない。

「本当に、あっけらかんとしてるのね」


 さて、今日は、理系の高校生だと習う、『数学的帰納法』というものを、話そうと思う。

「すうがくてききのうほう?」

 うん。

「高校の理系で、何年生で習うの?」

 2年生だと思う。

「難しいの?」

 カラクリが分かれば、凄く易しい。そして、強力な証明法だ。

「本当に、易しいといいけど」

 私達は、代入という方法を使って、自然数の掛け算を、定義した。

 でも、この掛け算で、交換法則が、成り立つことは、証明してない。

自然数の掛け算では、成り立つんじゃない? 太郎さんの公文の先生じゃなければ」

 こういう、どこから、証明の糸口を見つけたら良いか分からないような問題で、数学的帰納法が、力を発揮する。

 こういう風にやるんだ。

 まず、証明したいのは、



 定理 38  乗法の交換法則

 {m,n}自然数とするとき、{m \times n=n \times m} が、成り立つ。



という定理だ。

 さて、これを、証明するとき、次のように、やる。


 第1段階

 任意の自然数{m} について、{n=1} のとき、成り立つことを、証明する。

{m \times n=n \times m} で、左辺は {m \times 1} であるから、{m}{1} に代入して、

{m \times 1 = m}
{~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}
{~~~~~~~~1=1}


 一方右辺は、{1 \times m} であるから、{1} を、{m} 個の {1} に代入して、

{1 \times m = \overbrace{1+ \cdots +1}^m}
{~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~\uparrow}
{~~~~~~~m=\underbrace{1+ \cdots +1}_m}


である。従って、両辺が等しくて、{n=1} のとき、成り立つ。

「なんか、当たり前の気がするけど」

 いや、いつも、第1段階は、こうなんだ。


 第2段階

 任意の自然数{m} について、自然数 {k} 以下のすべての自然数 {n} について、定理が成り立つとして、{n=k+1} でも定理が成り立つことを、証明する。

 仮定より、{m \times k=k \times m} である。

 {m \times (k+1) =(k+1) \times m} を、証明したい。

 さて、左辺を計算して、右辺を導出できれば良いが、途中で、行き詰まる。

 こういうときは、右辺の方から、お迎えに行った方が、良いこともある。

{(k+1) \times m = \overbrace{(k+1)+ \cdots +(k+1)}^m}
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}  {m} 個の {1}{(k+1)} を代入。
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~m= \underbrace{1+ \cdots \cdots \cdots +1}_m}  つまり {(k+1)}{m} 個。

 右辺を整理して、

{~~~~~~~=k \times m +m}

 帰納法の仮定より、

{~~~~~~=m \times k + m}

{~~~~~~~= \overbrace{m+ \cdots +m}^k +m}
{~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~ \uparrow}  {m \times k}{k} 個の {1}{m} を代入したと捉える。
{k+1= \underbrace{1+ \cdots +1}_k~+1}


{~~~~~~~~~= \overbrace{m+ \cdots +m}^{k+1}}
{~~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}  仲間はずれの、{m} を加えて、まとめる。
{k+1= \underbrace{1+~ \cdots ~+1}_{k+1}}  {m}{k+1} 個と捉える。


{~~~~~=m \times (k+1)}

 以上で、求めたかった式が得られた。

「うっ、結構難しいわね」

 ひとつひとつの式の変形が、ギャップのあるものに感じられるかも知れないけど、これくらいに、付いてこられないと、この先、厳しい。

「太郎さん、意欲のある中学生でも読めるようにすると言っておきながら、突き放すのね」

 ある水準まで、読者のレヴェルを上げないと、面白い話が書けないんだ。

「私は、『フーリエの冒険』だって、難しいレヴェルよ」

 難しい部分は、何度も説明するよ。

 さて、


 第3段階

 以上により、全ての自然数 {n} に対して、{m \times n=n \times m} が、成立する。{m} も、任意だったから、任意の自然数 {m,n} について、乗法の交換法則が、成り立つことが、証明された。

   証明終わり


「えっ、これで、証明されたの?」

 この3ステップを行うだけで、任意の自然数について、目当ての定理が成立することを証明できるところが、数学的帰納法の強みだ。

「でも、どうして、これだけで、いいの? うまく表現できないけど、例えば、{m \times n}{n} の方だけでなく、{m} の方も、{k+1} とかしなくていいの?」

 そう。特待生の麻友さんは、そういう質問をしなきゃ。

「えっ、痛いところ突いた?」

 痛いという程じゃないけど、説明しにくいところを、突いてきたな。

 これは、すっごく意味を考えながら、証明しないといけない、証明法なんだ。

 まず、{m \times n=n \times m} の、{n=1} の場合を、証明したね。

 この証明は、すべての {m} について、成立するという証明だった。

 だから、次は、{n=1} なら、すべての{m} について、成り立っているという仮定を置いて、先に進めるんだ。

 今度は、{n=2} の場合となる。

「ちょっと待って、太郎さんは、{n=2} の場合なんて、証明しなかった」

 実は、してるんだよ。

 {n=k} の場合正しいとして、{n=k+1} の場合を証明している。

 この {k} として、{1} を取ると、{n=1} が正しいことを仮定して、{n=2} の場合を証明していることになるでしょ。

「あっ、そうか。そして、{n=2} の場合も、任意の{m} について証明してるから、それを元に、次は、{n=3} の場合、その次は、{n=4} の場合と、どんどん証明できて行くんだ。改めて、{m} の方にも、{m=k+1} とかしなくていいんだ」

 今のはちょっと、特待生の突っ走りだったけど、正しいことを言ってる。

「私、数学の才能ある?」

 私、年取って思うんだけど、あるところから先は、才能より、どれだけそれを好きかが、自分を懸けて良いかの一番の要因だと思う。

 数学の才能が、私にあったことは、改めて言うまでもないが、大学3回生で、上野さんの研究室に入るとき、私は、採用されるかどうかも分からないのに、1万円以上のこの本を買って、先生の招集に応じた。

Twistor geometry and field theory

Twistor Geometry and Field Theory (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)

Twistor Geometry and Field Theory (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)

 私は、微分幾何学を、もの凄く勉強しなければならないだろうな、と思っていた。

 ところが、先生の言ったことは、

線型代数を、勉強してきて下さい』

というものだった。

「あっ、齋藤正彦さんの、『線型代数入門』」

 私も、あれを、勉強しておけば、良いのだろうと思った。

 ただ、上野さんは、おかしなことを、言ったのだ。

ブルバキで、勉強すると、いいですよ』

と言って、ブルバキの『代数 2』を、見せてくれたのだ。

 さらに、

『私は、これで勉強したんですよ』

と言って、わら半紙の綴じてあるのを、見せてくれた。

『それ、表紙が、ないだろ。海賊版なんだ』

 フランス語の原書のブルバキを、海賊版で手に入れ、学生時代勉強したということだったのだ。

 それで、私は、

ブルバキは、『集合論』の最初の方だけ読んだことがあるのですけどね』

と言った。

 これは、本当のことだった。

 私は、数学の危機に陥ったとき、ブルバキも参照していたのだ。

 それに対し、上野さんは、

『あんなもの読んだら、気が狂う』

と、おっしゃった。

「気が狂うってどういうこと?」

 私が、その後、本当に気が狂うことを、あの先生は、あのときから、感じていたのだろう。

 ブルバキ数学原論の『集合論』を読むということは、数学が、本当に無矛盾かどうか、疑うということであり、

『自分の存在を、肯定できるかどうか?』

という、数学とはあまり関係のない問題まで、抱え込むことになるのだ。

「えっ、太郎さん。私と若菜と結弦を、発狂させたいの?」

 いや、発狂せずに、この世界の真理の深淵に、触れてみるというのは、可能なことなんだ。

 そして、

『真理とは、こういうものか』

と納得するのは、人生を豊かにする。

 ただ、これは、あの先生が考えていたように、3回生から飛び級で、私を大学院に入れて、どんどん論文を書かせるという、のんびりできないペースで進む場合、本当に締め切りに迫られて、そのストレスで、発狂するという意味では、問題のある行動だったのだ。

「太郎さん、3回生から、飛び級できたの?」

 後で、説明するけど、先生の言った、線型代数と、『線型代数入門』の線型代数が、違うものだったので、私は、上野さんの期待していたほど、勉強が進んでいなくて、飛び級してたら、もっと、恐ろしいことになってた。

 多分、サラリーマンになった、学年で数学が2番目にできたひとのように、行き詰まり、私に取って、数学は恋人だから、サラリーマンなんかにもなれず、自殺していたのは必至。

「『サラリーマンなんか』って平気で言える太郎さんって、やっぱり普通じゃないわね」

 私は、本当に、京都にある吉岡書店という古書店で、ブルバキの『集合論』と『代数』を、全巻買って、読もうともしていた。

 そして、4月になって、ゼミが始まって、1回目はなんとかなった。

 しかし、5月に入った頃から、先生の言っていた、線型代数というのが、行列で表す易しい入門的なものでなく、射影空間とか、グラスマン多様体とかいった、もっとアドバンスドなものだと、分かってきた。要するに、コーディネートフリーな数学という、幾何学の関係したもので、それは、どんな本に書いてあるのか、と言うのであれば、最近の本では、

桂利行『代数学Ⅱ環上の加群』(東京大学出版会

代数学〈2〉環上の加群 (大学数学の入門)

代数学〈2〉環上の加群 (大学数学の入門)

などが、それにあたる。

 代数学も、私は、良く分かっていなかった。

 先生が、

『複素幾何、まだ見えないか?』

と言ったのが、印象に残っている。


 そう。私は、負け犬になったようなものだ。

 もし、私の数学が、才能だけだったら、この人生は、失敗である。

 でも、私の数学は、才能だけではなかったのだ。本当に、数学が好きだったのだ。

「ああ、太郎さん。私を好きになるやり方から、分かる。太郎さんは、数学と、本当に、いくらでも語れるくらい、仲良くなっているのね」

 だからまあ、麻友さんに、のろけているような感じなんだよね。このブログは。


「太郎さんは、こういう本は読まないのかしら? かなり売れてるらしいんだけど」

西内啓『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

 今、私、統計学を学びたいという強い衝動はないんだ。

 そもそも、ルベーグ測度論というものを学べば、統計学の全定理に証明付けられるし、パソコンにExcelも入ってないから、何にも面白くない。


「今日は、『有理数体(その3)』という題だけど、有理数は、まだ出てこないの?」

 もうちょっと、準備してからだけど、どうやって、有理数を、作ると思う?

有理数って、分数のことよね」

 そうだよ。

「じゃあ、この前、太郎さんが整数を作るとき、座標を使ったのを真似て、

{\displaystyle \frac{5}{7}=[(5,7)]}

みたいに、したら?」

 うん。それで、いいんだ。

「えっ、これで、ドンピシャ?」

 そうなんだけどね、座標の {(5,7)} に、大括弧 {[,]} 付けただけだと、整数を作るときの斜め45度の直線上の点という意味と、違う意味で使っていると、見ている人に、伝わらない。

「あっ、勝手に、大括弧付けちゃいけないんだ。今度の場合、斜め45度の直線上の点の集合とは、意味が違うんだ」

 うん。だって、分数なら、{\displaystyle \frac{4}{3}} と、{\displaystyle \frac{8}{6}} は、等しいはずだけど、{(4,3)} と、{(8,6)} とは、計算すれば分かるだろうけど、傾き {\displaystyle \frac{3}{4}} の直線上にある。

「うわっ、早速太郎さんに、はねられた。数学って、やっぱり、一筋縄ではいかないわね」

 じゃあ、今日は、ここまでに、しようか?

「今日は、ヤクルトレディ、行った?」

 うん。来たんだけどね、今朝1時28分に目覚めて、眠れないから、6時頃まで、ブログ書いてたんだ。その後眠気が襲ってきて、7時頃寝た。10時にヤクルトさん来たとき、眠ってたんだ。

「それで、どうしたの?」

 辛うじて、『ヤクルトです』っていう声が聞こえて、慌てて起きて、着替えて出た。

「10時に寝てるなんてね」

 良い身分なんだけど、この生活を失ってでも、麻友さんと、一緒になりたい。

「太郎さん。私、もうしばらく、女優でいたいの。太郎さんの予測では、7年後には、お金を稼ぐという概念がなくなるのでしょう。その予測が正しかったら、7年後に太郎さんと、新しい形の結婚をするわ。だから、7年間、待ってもらえない?」

 麻友さんと、結婚するのは、7年後でも良いけど、7年間全く会えないのは、辛いなあ。

「私のためになら、死ねるんじゃなかったの? 会えないくらいで、ブーブー言わない」

 じゃあ、ペンケースも、自分で買わなきゃダメか。

「お金あるんでしょ?」

 ヤクルトさんに毎週1,589円、WOWOWに、2,484円、W3M∞に、540円。全部で、ひとつき9,380円。

 そんなに、簡単には、用意できない。

 もし、麻友さんの出演するミュージカルがあったりしたら、その切符をどうやって取るか、ちょっと今は、方法がないに等しい。

「本のリストは?」

 最後の手段だね。


「朝ドラのことを、何も書いてくれないのね」

 麻友さんが映るたびに、

『ああ、あそこにいる』

と、顔がほころぶ。

「何か、提案は?」

 麻友さんも、眼鏡持ってるから、分かると思うんだけど、眼鏡って、汚れるよね。

 ドラマの中で、眼鏡を拭くシーンって、滅多に見ないけど、日常茶飯事のはずだ。

 だから、敢えて、『なつぞら』の中で、茜ちゃんが、眼鏡を掃除しているシーンを作ったら、麻友さんの素顔が、お茶の間に流れる。

「アイディアとしては、面白いかもね。本当に、私の顔で、好きになったのね」

 そういう、意地悪は、言わないこと。

「そういえば、雪次郎君を元の道に、戻すために、お父さまの雪之介さんが、川村屋で、働くというの、今でも、太郎さんのために働いている、太郎さんのお父さまが、オーバーラップしなかった?」

 似てるなあ、とは、思ったけど、私の父は、確かに私のために働いているけど、多分、あの会社を辞めたら、行くところがなくなって、研究したいこともなくなって、一気に呆けると思う。

 だから、父は、自分のために、会社へ行ってるんだ。

 今、25歳の麻友さんに取って、行く場所がない、なんていう苦痛を感じることは、想像もできないだろうけど、78歳ともなると、本当に、

『自分は、今日、何をしよう?』

というのは、切実な問題なんだ。

「お金を稼ぐためでなく、どんなことのために、人は、生きるようになるの?」

 この私のブログを書く行為が、それを、物語っているね。

『ほらっ、こんな面白いことが、できたよ!』

と、紹介することに、人間はもっと、熱を入れるべきだ。

 多分、今後戦争が起こっても、戦場に向かうのは、AIで動くサイボーグだろう。

 もう、人類の最大の懸案事項は、解決したのだ。

 お金の問題も、解決しよう。

「その方法は?」

 1つの方法は、小学校高学年以上に全員スマホを、持たせ、流通をすべて、仮想通貨で、決済することを、世界中に広める。

 そうしておいて、今の現金を、使用禁止にする。

「そんな、卑怯な」

 いや、歴史上には、徳政令とか、政府がかかわると、とんでもないことをしている。

 卑怯でも、迷惑を被る人がいないなら、それは、卑怯ではないかも知れない。

「でも、お金持ちの人、例えば、資産10億円なんていう人は、怒るわ」

 どうかな。資産10億円って言ったって、本当に10億円使う機会なんて、ない。

 人間、ある程度以上、お金があると、もうそれ以上は、いくら多くても、同じなんだよ。

「でも、老後の蓄えが・・・」

 25歳で、もうそんなこと言ってるの?

 老後は、十分幸せに暮らせる、というのを、納得させれば、良いんだろう。

 それぞれの人が、お金のために働くのではなく、他の人を喜ばせるために、行動するというのなら、老後面倒を見てくれる人は、いるだろうと、思えないのかな?

「太郎さん。自分だって、介護福祉士の資格も持ってないのに、良く言うわ」

 まあ、これから、7年で、どんなことが起きるか、見ていようよ。

「その話には、乗ったわ。本当にお金がなくなったら、太郎さんとキスくらいは、してあげるわ」

 じゃあ、今日は、ここまで。

 現在2019年6月27日16時30分である。おしまい。