現在2023年6月5日18時31分である。(この投稿は、ほぼ3648文字)
麻友「太郎さん。通院で、みなと赤十字病院へ、行ったのよね」
私「行ってきたよ」
麻友「お父様と、面会したの?」
私「母と2人で行って、母が、面会者になって、デイルームに父を、連れてきて、3人で、話した」
麻友「私の話も、出たの?」
私「ただでさえ、救急で、入って、点滴を打っている父に、いきなりその話は、できなかった。ただ、
父「以前から、小学生が読める、物理の本を、書くと言ってたが」
私「それは、もう1000ページ以上、書いてるよ」
父「それを、妹に読んでもらえないのか?」
私「そんなの、無理だよ。例えば、・・・」
と、スマホで、『女の人のところへ来たドラえもん』のブログの、『1から始める数学(その14) - 女の人のところへ来たドラえもん』の投稿を見せようと、スマホを開くと、
父「そんなに、女の子の写真が、入っているのか」
と、聞いてくる。差し当たって、父は、ひとりひとり別な女の子なのだろうと、思っているようだが、そんなのは、無視して、あの投稿を、見せる。
父「これも、数学の話を、女の子のところへ、持って行ってる」
母「そういう子なのよ。だから、こんな病気になった」
麻友「太郎さん。それを、反駁しないの?」
私「麻友さんと、一緒になれれば、父母の反対も、全部消える」
麻友「そう思って、聞き流してるんだ」
私「ただ、今日の父の、『女の子と遊んでるから、まともな科学論文が、書けない』というのは、腹が立ったので、麻友さんの前で、復讐してあげる」
麻友「えっ、酷いことしちゃ駄目よ」
私「分かっている」
私「Yahoo! でも、Google でも、Bing でも良いから、『松田徹郎 東工大 学位論文』と、検索して欲しい。『松田』だけで、検索したかったが、松田稔樹、松田晃史などの、同姓の人が引っ掛かっちゃって、見つけられなかった」
麻友「どれを、見れば、良いのかしら?」
私「『松田徹郎 2018年 研究業績一覧|T2R2東京工業大学リサーチ』というの」
麻友「何よ、トップにヒットしてるじゃない。ポンッ」
麻友「あれ~、どうすれば、良いんだろう?」
私「業績、ないだろう」
麻友「でも、タブが、2019年以降になってる。お父様の学位論文、2018年だった」
私「さすが、特待生。タブを、全件表示にして」
麻友「ポンッ、うわぁ。英文のも」
私「下の方に、学位論文として、
イットリウム系高温超伝導線材のNMR磁石への適用に関する研究
というのが、3段あるだろう」
麻友「1段目は、論文要旨、2段目は、本文、3段目は、審査の要旨と、なってる。論文本体が、ネット上で、誰でも見られるの?」
私「見られるんだ。ただ、普通の論文だったら、こんなには、見られない。これが、学位論文だから、こんなことになる」
麻友「博士号って、もの凄いものなのね」
私「これが、公開されているので、復讐ができる」
麻友「そんな、私のために、お父様の手柄を奪うなんて、やめてよ」
私「そういう麻友さんの前で、酷いことは、しない。ただ、勘違いの指摘と、修正案だけ書こう。さっきの3段のうち、真ん中の本文の行の文末のPDFのマークをクリックすると、論文自体が、見られる」
麻友「これ、読んでも、分からない」
私「まあ、それは、しょうがない。それに、これは、模範的な論文でもない。書くべきことだけ書いて、撤収するか」
麻友「初めの方だったの?」
私「論文本文の、第1ページだった」
麻友「それは、致命的なの?」
私「全然、致命的ではない。ただ、父が、量子力学、不勉強だった。というだけだよ」
麻友「どう?」
私「第1ページの、この部分。
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1.1.1 NMR 分光法の原理とその意義
供試試料の原子核は核スピンを持っており、外から磁場がかかっていない場合、ランダム方向に核スピンが一定の周波数(ラーモア周波数)で歳差運動をしているが、外部静磁場の中に置かれた試料の原子核は、外部静磁場方向にエネルギーの高低に応じて、上下に歳差運動の方向が分かれる(ゼーマン分裂)。そのエネルギー差に応じた電磁波(ラジオ波、RF)を RF コイル(プローブ:アンテナの役割)から照射すると、エネルギーの低い核スピンがエネルギーを吸収し RF コイルに垂直方向に向いて励起状態となる。そして励起状態になった核スピンは歳差運動をしながら吸収したエネルギーを放出してゆく。
この、ある特定のエネルギーを吸収し放出すること、即ち共鳴する事を NMR 現象と言う。放出されるエネルギー(信号)を自由誘導減衰(FID, Free Induction Decay)といい、励起状態の核スピンが放出した FID を誘起電圧として RF コイルがとらえ、フーリエ変換することで NMR シグナルとして得ることができる。
シグナルの応答、すなわち共鳴エネルギー(周波数)は、核スピンの置かれた分子内の微妙な磁気的環境、例えば近接する原子や原子団により影響を受ける。したがって、逆に、シグナルを処理することにより試料の分子構造の解析や、原子団の隣接関係の解析が可能となる。
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麻友「えっ、マーカー引いたところ? これだけで、太郎さんが、復讐なんていうほど、重要な間違いを、含むわけ?」
私「父は、頭で、状況を、思い浮かべていないのだろうか? 外部静磁場が、かかっている。原子核のスピンは、磁場に平行になる。磁場と同じ向きの方が、逆向きより、エネルギーが低い。これは、中学で、磁力線を習うときも、N極に、近くなるのは、方位磁針のS極だから、簡単に起こる方が、エネルギー的に低いので、思考実験でも、確かめられる」
麻友「ああ、そう考えるのか。それで、『エネルギー差に応じた電磁波(ラジオ波、RF)を RF コイル(プローブ:アンテナの役割)から照射すると、』と言った後、太郎さんのマーカーの部分になる」
私「父は、もうひと息なのだ。エネルギーの低い核スピンというのは、大きい磁石の周りの小さい方位磁針と同じなのだ。逆さを向くと、エネルギー的に高くなる。その、まさに反対を向くだけの、ぴったりのエネルギーを、与えると、逆さまを向くんだろう? この逆さまの向きは、どっち向きだい?」
麻友「最初と、反対」
私「つまり、どっち向き?」
麻友「磁場が、・・・。外部磁場と、平行になってたのよね。だから、外部磁場と反平行?」
私「父、どう書いてる?」
麻友「『 RF コイルに垂直方向に向いて励起状態となる。』えっ、RF コイルって、外部磁場より、強いのかしら?」
私「これは、実際、父と一緒に、実験していないから、本当は、分からないけど、父、この部分、もの凄く苦労してたのね。父は、化学屋さんだからその量子化学と、物理での、量子力学や場の量子論とは、扱う対象が全然違ってて、常識も全然違う。それを、認めた上で、上のマーカーの部分は、
エネルギーの低い核スピンがエネルギーを吸収し RF コイルに垂直方向に向いて励起状態となる。
エネルギーの低い核スピンがエネルギーを吸収し、逆転して励起状態になる。
と、修正すべきだと、提言しよう」
麻友「論文自体が、ダメになるとか、そういうことじゃ、なかったのね」
私「そうだったら、博士号もらえてないよ」
麻友「でも、あんな一文まで、目を皿のようにして、読んでるの」
私「数学の本を、本気で読んでいる場合、どうしてもそうなる」
麻友「今までに、そういう経験は?」
私「大学1回生の『解析入門Ⅰ』、2回生の冬休みの『ルベーグ積分入門』、3回生の秋の『体とガロア理論』、他にも、私の本で、ボロボロになっている本には、そういう歴史がある。『接続の微分幾何とゲージ理論』とか、カバーがないだろう」
麻友「あー、でも、こういう読み方してるから、数学基礎概説のエラータなんて、できるのね」
私「麻友さんにも、分かるように、説明出来て、良かった」
麻友「今日は、あの2人を、呼ばなかったのね」
私「一応、父の前で、『ブログの中で、結婚して、子供もいるんだ』というのは、言っておいた」
麻友「今日は、私を守ってくれて、ありがとう」
私「じゃ、おしまい」
現在2023年6月5日21時11分である。おしまい。