女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

綺麗な本を見せてあげる

 現在2023年12月20日20時20分である。(この投稿は、ほぼ2501文字)

麻友「写真集か何か、買ったの?」

私「そういう綺麗さではない」

若菜「お父さん、とうとうあの本取り出して・・・」

結弦「一昨日、アマゾンから、あの本届いたんだよな」

麻友「一昨日買った本が、綺麗なの?」

私「一昨昨日買って、一昨日届いたのは、この本」

麻友「まあ、表紙のデザインは、悪くないけど」

私「この本を、見ていくと、現代確率論の手法を、用いている」

麻友「量子数理物理学ってことは、量子力学?」

私「父が、超伝導を研究していたとき、ランダウとリフシッツの理論物理学教程の第9巻『量子統計物理学』を、読みたかった。だが、この本の題名にもなっている、『汎関数積分法』というものが、良く分からず、挫折していた」

麻友「太郎さんが、統計物理学まで、勉強していたとは、知らなかったは」

私「実際、始めただけで、すぐ挫折していた。そして、今回の本を、手に入れた。この本の付録にも、確率論の主要な部分は、採録されているけど、『確率論やるなら、この本』というのがあった。若菜が言った、あの本とは、この本だ」

麻友「平凡な本だけど」


私「伊藤清(いとう きよし)さんは、私が学生だった頃から、有名で、その発案による、確率過程論、確率微分方程式、は、後に、経済学に応用され、ブラック-ショールズ方程式などが生まれる元になった。その確率論を、伊藤さん自身の著書で読めるのは、光栄なことだ」

若菜「このタイミングで、この本って、凄いですよね。でも、なぜ学生時代に、読まなかったのですか?」

私「読もうとしてる。実際、私がこの本を買ったのは、1992年6月13日京都大学中央書籍にてであり、2回生で、もう読み始めた」

若菜「えっ、読み始めているんですか?」

私「うん。ただ、読み始めて、易し過ぎるのに違和感を感じた」

結弦「易しいなら、読み続ければ?」

私「そういうことじゃ、ないんだ。易しいというのは、高校生レヴェルということなんだ。私は、後半の難しさから言って、どこかに絶壁があるに違いないと、確信した。それで、先を見ていくと、あった」

結弦「どこどこ?」

私「{\mathrm{Lebesgue}} 測度と、あるだろう。2回生になったばかりの私には、わざわざ定義もせず、説明もしてくれずに、ルベーグ積分を使われるのは、絶壁を登れと言われるに、等しかった。2回生の冬休み、伊藤清三『ルベーグ積分入門』(裳華房)を、読んでいたのは、確率論のためでもあった」

若菜「伊藤清三(いとう せいぞう)さんは、伊藤清(いとう きよし)さんの弟さんですね」

私「結局、『ルベーグ積分入門』は、どうしても、読み切れず、第Ⅱ章までで、止まってしまった。この累々と重なる屍を見てくれ」

麻友「6冊使って、第Ⅲ章に入れず。いつぞやの、『ルベーグ積分超入門』を、買い戻したら?」

私「さて、この思い出話が、佳境に入る」

麻友「今から?」


私「『ルベーグ積分入門』の巻末のあとがきに、


このほか位相解析方面の書物は最近多数発行されているが、代表として次のものをあげておく:邦書では

[32] 吉田耕作,位相解析Ⅰ(岩波,現代数学),


とあった。

 それから、月日は流れる。私は、4回生になり、いつも通り、古本屋の吉岡書店に入った。6月3日のことである」

若菜「その『位相解析Ⅰ』が、あったの?」

私「あったなんてものではない。誰かが、10冊以上の価値のある数学書を、売っていたんだ」

結弦「お金に困ったのかな?」

私「いや、そうではなく、研究者になる積もりだった人が、その道に進む才能がないと、気付き、愛読してきた本を、売ったという感じだった」

麻友「見せてよ」

私「外側は、古いというだけだけど、中が、

こんなになっているんだ」

 注.スキャンしてきました。

表紙

23ページ

119ページ

169ページ


若菜「色鉛筆で、塗り分けている。この人、本当に、数学好きだったんでしょうね」

結弦「最後まで、これ、通しているの?」

私「貫いている」

 注.スキャンしてきました。

317ページ。


麻友「この話は、それだけじゃないんでしょ」

私「本当は、色鉛筆でこの本と同じようにした、伊藤清さんの『確率論』も、あったのだ。実は、伊藤清さんの『確率論』は、2種類あった。先輩によると、私の持っていない方が、専門的なことが少し書いてあると言うことであった」

若菜「両方買おうか、迷ったのですね」

私「そう。でも、今持っている『確率論』だって、十分高度なことが書いてあるから、これで良いと思ったんだよね」


結弦「それで、『位相解析Ⅰ』は、役に立ったの?」

若菜「お父さんが、凄く大事にしている本に、

が、あります。吉田耕作さんが、『位相解析Ⅰ』を、拡張させて、英語で出版したもの。お父さんは、これのハードカバーのを持っていて、お気に入り」

結弦「だから、日本語の『位相解析Ⅰ』が、役に立ってるんだ。今日は、その話をしたかったんだな」

私「そうなんだ。あの本、綺麗だっただろう」

麻友「昔は、時間があったのね。でも綺麗だった」

私「じゃあ、解散」

 現在2023年12月21日0時22分である。おしまい。