女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

倒せツォルンの補題(その15)

 現在2024年1月4日17時48分である。(この投稿は、ほぼ3356文字)

麻友「昨日の問題、解けたの?」

私「解けたと、見込んでいる」

若菜「私達に、説明してみたら?」

私「よし、頼むぞ」

結弦「最初から、やる必要はないよ。肝心な部分だけでいい」


私「分かった。まず、


 定理 5.1の証明中に、


*******************************

 いま、

 {\mathscr{D}=\{D \in \mathcal{P}(a)|\exists C (C \in \mathscr{C} \wedge D=\mathrm{u.b.}(C)-C) \}}

とおき,{\mathit{f}}{\mathscr{D}} の選出写像としよう.

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という部分がある、ということだった」

麻友「 {\mathscr{D}} が、可算集合なら、可算選択公理が、適用できて、選出写像を作れる。選出写像も、選出関数も、同じことよね」

私「もちろん、同じだ」

若菜「どうすれば、可算集合だと、言えるのですか?」

私「この場合の常套手段は、可算集合だと分かっている集合を持って来て、{\mathscr{D}} の元の個数は、その集合以下だと、証明するというものだ」

結弦「昨日は、鎖の始点と終点を、指定するんだと、言ってたけど、お父さん自身が、反例を持っていた」

私「鎖の全体の集合は、可算でないのかも知れない。ただ、良く本文を読むと、鎖全部の個数ほど、

 {\mathscr{D}=\{D \in \mathcal{P}(a)|\exists C (C \in \mathscr{C} \wedge D=\mathrm{u.b.}(C)-C) \}}

の、{D} は、多くないことに気付いた」

結弦「数え方の問題?」

私「そう。重複して数えないように、気を付けるため、{\wedge D=\mathrm{u.b.}(C)-C) \}} の部分に注意して、鎖 {C} が、1つあるたびに、1個 {D} が、あると数えるのを、やめる。別な、{C} でも、同じ、{D} になることもある」

若菜「ウッ、凄い、現場中継。数学の問題が、解ける瞬間に出会える」

私「{\wedge D=\mathrm{u.b.}(C)-C) \}} で、結局、{C} の、てっぺんの元 {\gamma} が、どうかだけが、{\mathrm{u.b.}(C)-C) \}} に、影響するし、{\mathrm{u.b.}(C)} は、{\gamma} の、上界集合というわけだから、{\gamma} が決まれば、全部同じだ」

麻友「時計見て! 2024年1月4日18時22分 解けたのよ」

私「そう。{\gamma} は、{a} の元だから、可算種類しかない。つまり、{\gamma} は、可算個しか有り得ない。そして、{\wedge D=\mathrm{u.b.}(C)-C) \}} の、{D} も、それより少なくなることはあれ、多くはならない。つまり、 {\mathscr{D}} は、可算集合だ」

結弦「『{C} の、てっぺんの元 {\gamma} が、どうかだけ』って言ってるのは、てっぺんがあると、仮定しているけど、これは、いいの?」

私「デリケートな部分があるのは、分かっていたが、証明を完成させることを優先して、突っ走った。そうだ。{C} の、てっぺんの元 {\gamma} があるかどうかは、全然明らかではない。例えば、{C=\{x|0 \leqq x < 2\}} で、{a=\{x|-1 \leqq x < 2 \}} とすると、{a} の中で、{C} に、てっぺんはない。でも、この場合、{\mathrm{u.b.}(C)=\emptyset} だな。{\mathrm{u.b.}(C)-C \neq \emptyset} という条件があって、上界集合がないということは、起きないことになっている(この部分では、そう仮定して証明を進めている)。
 それから、 {a=\{x|-1 \leqq x < 3 \}} とすると、{\mathrm{u.b.}(C)=\{x|2 \leqq x < 3 \}} となる。この場合、{C} にてっぺんはないが、{\mathrm{u.b.}(C)=\{x|2 \leqq x < 3 \}} には、最小元がある」

結弦「そうすると、{C} のてっぺんの元と言わず、{C} と、{\mathrm{u.b.}(C)} との、境界の点って言えば、良かったんじゃない? 境界の点と言っても、{a} の元であることに変わりないから、可算種類しかないよ」

麻友「これで、大丈夫かしら?」


若菜「そわそわ」

私「うん?」

若菜「これ、言って良いのかな?」

私「なんだ、若菜。言いたいことがあるなら、言え」

若菜「あの、デーデキントの切断って、もちろんご存じですよね」

私「知っているが」

若菜「 {a=\mathbb{Q}} として、{C=\{x|0 \leqq x < \sqrt{2} \}} で、{\mathrm{u.b.}(C)=\{x|\sqrt{2} < x < +\infty \}} とすると、境界の点、{\sqrt{2}} は、{a} に、存在しないんじゃないですか?」

私「若菜、偉いよ。よくそこまで考えた」

若菜「お父さんも、気付いていたんですか?」

私「私は、そういうことは、起こらないということは、分かっていたが、どう説明したものかと、ずっと水面下で、思考を続けていたんだ」

若菜「起こらないんですか?」

私「つまり、可算個の有理数の大小を用いて、1つの無理数を、指定するということは、できないんだ。逆に、可算個の有理数を、用いて、大小関係だけで、ある無理数が、必要になる状況というものは、作れない」


結弦「聞いてりゃ、とんでもない、話し合いしてる」

麻友「指定する、とか、必要になる状況、とか、初めて聞く概念だけど」

私「今、この1時間くらいで、思い付いたことだよ」

若菜「お父さんも?」

結弦「どうやったら、そんな、とんでもないことを、スラスラと、思い付けるの?」

私「天才ほどでは、ないかも知れないのは、これが、アウトプットだけではない点だ。高校2年生から読んでいる、『数Ⅲ方式ガロアの理論』他、『体とガロア理論』、『数論』、『代数概論』、『代数的整数論』、などの本から、断片的にインプットされた知識が、体の拡大という『数Ⅲ方式ガロアの理論』の中心的テーマの周りに、集合したんだ」

麻友「今まで分かっていなかったことの、再発見だったのね。それが、『可算ツォルンの補題』の証明の掉尾を飾った。見事だったわよ」

私「今日は、これで、終わりにしよう」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

麻友「おやすみ」

 現在2024年1月4日21時36分である。おしまい。