女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

超実数そして実数(その7)

 現在2022年9月28日17時44分である。(この投稿は、ほぼ4887文字)

麻友「分子生物学は?」

私「こちらを、一段落させたいだろう」

若菜「真面目に、超フィルター、非単項超フィルター、{\omega ー\mathrm{incomplete}} な超フィルター、自由超フィルターと、順々にやっていくのは、いやです。一番面白いのは、(その4)のときの、この脚注でしょう」



それに,非単項で自由でない超フィルターは存在するかどうか分っていない.(ここに、脚注がある)こういう理由であえて慣用を破った.ほかの本や論文を見るときは注意を要する.


 脚注

 これはいわゆる可測基数の存在問題である.もしゲーデル{V=L} を仮定すれば可測基数は存在しない.



私「そうなんだ。今回の、超実数の構成の話で、一番面白いのは、この、可測基数の話だ」

麻友「えっ、ちょっと待って、いつの間に、そんなところまで」

私「いや、麻友さんの今居るところは、大学時代の私と、同じだ。『非単項で自由でない超フィルターは存在するかどうか分かっていない』というのを、読んで、存在するかどうか、私が調べてやろうじゃないか。と思ったものだった」

結弦「存在しないの?」

私「京都から、帰ってきた後も、数学基礎論を、学び続けた。視界が、開けてきたのは、

などを、見つけた頃だ。きちんと言っておくと、3冊目の本(の88ページに)、


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構成可能公理(Axiom of Constructibility)とは、すべての集合は構成可能集合であることを要請するものである.すなわち

{V=L または \forall x \exists \alpha (x \in L(\alpha))}

と表現される.

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              (倉田令二朗/篠田寿一『公理論的集合論』(河合文化教育研究所)

とある。さらに、進んで、2000年6月2日、

に、手を出す。可測基数という言葉を、見つける」

若菜「どんな風に?」


私「という表が、載っている。これは、ひとつひとつが、数学の公理系で、『1=0』を仮定(つまり矛盾を仮定)すれば、以下全部が、導ける。{\mathrm{I0ーI3}} を仮定すれば、そこから下の全部が、導ける。でも、『1=0』(つまり矛盾)は、導けない。以下同様に、{0^{\dagger} が存在する} を仮定すれば、可測基数は存在する。など、本当は、齋藤正彦さんの分かっていないというのは、未解決問題なわけではなく、公理の取り方によって、存在することも、存在しないことも、有り得ますよということだったんだ」

麻友「つまり、数学は、無数に存在するのね。乳酸菌が、1000億個あっても、かなわない」

私「もう、数学の公理は、調べられ尽くしている。でも、やっぱり、ブルバキの新巻が、出版されるというのは、オーソドックスな数学は、誰にとっても同じ、ZF(ズィーエフ)または、BG(ビージー)であるのだろう。そして、『本当に使い易いのは、BGの方だよ』というのが、私の見解なんだ」

若菜「ここまで、凄いことが、待ち受けているとは、思っていませんでした。お父さん、28年間、何もしてなかったわけでは、ないのですね」

私「ハハハ、若菜に、こんなことで、褒められるとはな」

結弦「お父さんから、数学の話を、今まで沢山、聞いてきたけど、数学が、こんなにあるなんて、最高の話だよ。でも、この後、どう数学を、勉強して行ったらいいの?」

私「この、公理が、一杯あるという話は、一旦、頭の隅に、どけておいて、きちんとした、正常な、数学の本を、代数学解析学幾何学のそれぞれについて、何冊か、読むのが、良い。実は、数学基礎論の本を、読んでいると、やっぱり同じ数学者なんだね、数学基礎論の証明に、代数学での証明のアイディアが、使われていたりする。数学基礎論の本で、その証明に出会うよりも、正常な数学で、出会う方が、ずっと、気持ちが良い。そして、正常な数学で、その定理を知っていれば、数学基礎論で出会って、嫌な思いをすることもない。再会を楽しむ気分になるからだ」

若菜「お父さんが、楽しそうに、数学やっている秘密が、分かりました」

麻友「さっきのは?」

私「齋藤正彦さんの本で、{\omegaー\mathrm{incomplete}}(訳せば可算級非完備)という言葉に対して、自由という言葉を充てると、言っている。普通の本では、自由は、非単項という言葉の訳語だという。そもそも、非単項とは、何か? これ、実は、凄く簡単で、単項フィルターというのは、前回、46だの、48だのと、やった、{\{4,7\}} を含む部分集合全体からなる集合というフィルターで、{\{4,7\}} の、一方を抜かして、{\{4\}} を含む部分集合全体からなる集合などと、したものなんだ。当然、フィルターになるし、実は、

{A \in \mathscr{F} または、\mathbb{N}-A \in \mathscr{F}}

を、満たして、超フィルターにもなる。だから、単項超フィルターとなる。でも、実は、齋藤正彦さんが、


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 注意

 これは慣用と著しく異なる用法である.普通,この条件をみたす超フィルターは、{\omegaー\mathrm{incomplete}}(訳せば可算級非完備)と呼ばれ,《自由》は《非単項》と同義である.我々が使うのはもっぱらこの種の超フィルターであるのに,この名称は長すぎるし,否定辞を含んでいるのも、気に入らない.それに,非単項で自由でない超フィルターは存在するかどうか分っていない.(ここに、脚注がある)こういう理由であえて慣用を破った.ほかの本や論文を見るときは注意を要する.


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         (『超積と超準解析』12ページより)

で、言ってるように、

『我々が使うのはもっぱらこの種の超フィルターであるのに,この名称は長すぎるし,非定辞を含んでいるのも,気に入らない.』

と言うように、実際に、私達が、使用したいのは、{\omegaー\mathrm{incomplete}} なフィルターで、しかも、単項であっては、困るんだ。今、証明はしないけど、(例えば、『超積と超準解析』の12ページに証明はあるが、この本以外にも証明はある)真理のカメさんの条件の

e){\mathscr{F}} は有限集合を含まない。

を、成り立たせるには、単項でないことが、求められるのだ。さらに、齋藤正彦さんは、非単項で、あるだけでなく、{\omegaー\mathrm{incomplete}} なフィルターであることを、求めている。『訳せば可算級非完備』というのは、つまり、可算個 {\mathscr{F}} の元を、共通部分取ると、元いた、{\mathscr{F}} から、こぼれ落ちるよ。ということだ」

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 {I} を無限集合,{\mathscr{F}}{I} 上の超フィルターとする.{\mathscr{F}} に属する可算個の元 {A_0,A_1,\cdots} で、{\displaystyle \bigcap_{n \in \mathbb{N}} A_n \notin \mathscr{F}} なるものが存在するとき、{\mathscr{F}} を自由超フィルター(free ultrafilter)と言う.

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と、なっている。私は、齋藤正彦さんとは、異なり自由を、{\omegaー\mathrm{incomplete}} で、通す。(その4)のときの約束を、守るため、


 1.1.12 命題

 無限集合 {I} 上の超フィルター {\mathscr{F}} に関するつぎの三条件は同値である.

a){\mathscr{F}} は自由({\omegaー\mathrm{incomplete}} な)超フィルターである.

b){\mathscr{F}} に属する可算個の元 {J_0,J_1,\cdots} で,{\displaystyle J_n \supset J_{n+1},\bigcap_{n \in \mathbb{N}}J_n=\emptyset} なるものが存在する.

c){I} の可算個の類への分割 {\{I_n;n \in \mathbb{N}\}}で、どの {I_n}{\mathscr{F}} に属さないものが存在する.


を、写しておく。そして、


 1.1.13 命題

 自由超フィルターは単項でない.とくに {I} が、可算集合なら、逆も成立つ.


を、思い出す。{\mathbb{N}} は、可算である。そうすると、単項でない {\Rightarrow} 自由({\omegaー\mathrm{incomplete}} )となる。つまり、可算の世界では、非単項であれば、齋藤正彦さんの欲しがっている {\omegaー\mathrm{incomplete}} も、成り立つのだ。だから、真理のカメさんの条件に、 {\omegaー\mathrm{incomplete}} になるための、条件は、書かれていないのだ」

麻友「ちょっと、レヴェルが、上がりすぎたわねぇ。若菜も、分かっているの?」

若菜「お父さんが、『真理のカメさん』という言葉に込めた、思いの強さは、分かりました」

結弦「可測基数というものの、冒険、いつか、してみたいなあ」

麻友「数学を、勉強して行く、良い方法は、どんなものかしら?」

私「自分のレヴェルより、ほんのちょっと、レヴェルの高い本で、勉強するのが、良いと思う。正確には、『この本で、勉強したかったんだけどな』という後悔がないように、勉強するのが良い。上野先生は、『僕達の頃は、みんな読めなくても、ブルバキは、持っていたものだけどな』と、言っていたが、ブルバキに限らず、『この本は、絶対読みたいという目標の本を持つ』のは、よいことだ」

麻友「真理のカメさんの、由来は、大分分かった。次は、どうするの?『超実数?』『分子生物学?』」

私「今回、かなり凄いこと、やったから、定着させるために、分子生物学の方に、進むかも」

麻友「待ってるわ。おやすみ」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

私「おやすみ」

 現在2022年9月28日21時33分である。おしまい。