女の人のところへ来たドラえもん

21歳の女の人と43歳の男の人が意気投合し、社会の矛盾に科学的に挑戦していく過程です。                    ブログの先頭に戻るには、表題のロゴをクリックして下さい。                                   数式の変形。必ずひと言、添えてよ。それを守ってくれたら、今後も数学に付き合ってあげる。

倒せツォルンの補題(その10)

 現在2023年9月7日18時41分である。(この投稿は、ほぼ2966文字)

麻友「ツォルンの補題、復活した!」

私「この証明、この本の他の証明と、何か違うと、思っていたら、テキスト本文に、

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Zermelo の整列可能定理(後の定理5.4)の証明のアイディアに基づいてこのような考え方を厳密化した Zorn補題の証明が,Halmos の Naive Set Theory に出ているので,それを以下に紹介しよう.

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                   (『集合と位相』93ページ)

と、書いてある。著者も、良い証明を、思いつけなかったようだ」

結弦「次のページも、一応見せて」

私「はい」

若菜「もう1ページで、証明終わりなのでしょう。それも見せて」

私「はい」

麻友「証明が、悪いというの?」

私「いっとき、この証明の半分ぐらいの分量で、証明できるのではないかと、思い込んでいた。だが、私の証明には、誤りがあった。ブルバキにしても、ハルモスにしても、長い証明になるのは、当然のようだ」

麻友「少し進めてよ」

私「うん」


 定理 5.1 (ツォルンの補題

 {(a,\prec)} を、帰納的順序集合、{\alpha \in a} とすれば、{a} の極大元 {\beta} で、{\alpha \prec \beta} となるものが存在する。


 定理 5.1の証明

 {\mathscr{C}=\{C \in \mathcal{P}(a) | \alpha \in C \wedge C}{a}の鎖{\}} とする.{\{\alpha \} \in \mathscr{C}} である.定理の仮定によって,{\mathscr{C}} の任意の元 {C} に対して{u.b.(C) \neq \emptyset} となる.もしも {u.b.(C)-C = \emptyset} となるような {C \in \mathscr{C}} があれば,定理は成り立つ.


私「1行ずつでも、進めよう」

麻友「それでも、良い」

私「もしかしたら、麻友さんは、私がここで、『てんで、分からないわ』なんて言わせて、証明を止めたら、がっかりするのかも、知れない」

麻友「あっ、本物の私が? 確かに、変わった人だからね」


私「気になるところ、聞いていいぞ」

若菜「{\{\alpha \} \in \mathscr{C}} である.とありますが、そう、置くということですか?」

私「良いところ、聞いたね。これは、そう置く、という意味ではない。{\mathscr{C}} の定義から言って、{\{\alpha \}} が、{\mathscr{C}} の元だと言っているんだ」

若菜「{\mathscr{C}} の定義から言って、って、どこで、定義したんですか?」

私「この証明の最初だよ。{\mathscr{C}} を、どう定義した?」

若菜「えっと、{\mathscr{C}=\{C \in \mathcal{P}(a) | \alpha \in C \wedge C}{a}の鎖{\}} とする.と、定義した。でも、{\{\alpha \}} なんて、ないけど」

私「うん。十分慣れていないね。まず、{\{C \in \mathcal{P}(a) | \alpha \in C \wedge C}{a}の鎖{\}} だけど、一応、こういう集合の書き方は、知ってるね」

若菜「縦棒の右側に、条件を書く」

私「そうだけど、実は、左側にも、条件を書いて良いんだ」

若菜「{\{C \in \mathcal{P}(a) |} の部分?」

私「そうだね。この集合の要素 {C} は、{\mathcal{P}(a)} の元だ。と、読める」

若菜「集合 {a} の、部分集合全体の集合の要素。つまり、その要素は、{a} の部分集合。そうすると、{\alpha} は、{a} の元だから、{\{\alpha \}} は、{a} の部分集合?」

私「そう」

若菜「だから、{\mathscr{C}} の元?」

私「それは、まだ分からない。他に確かめるべき条件がある」

結弦「お姉ちゃんさあ、{\{C \in \mathcal{P}(a) | \alpha \in C \wedge C}{a}の鎖{\}} だけど、{C} が、標的なんじゃん。{\alpha \in C \wedge}{C} に、{\{\alpha \}} を、入れちゃえば、条件1つクリアだよ」

若菜「{\alpha \in C \wedge} の、{C} に、{\{\alpha \}} を代入? {\alpha \in \{\alpha \} \wedge} あっ、条件満たされる」

麻友「そうすると、最後の条件は、{\wedge C}{a}の鎖{\}} の部分だけど。これ、ずるいことが、できそうね」

私「やってみて」

麻友「{\{\alpha \}} は、1個だけの元からなるから、自分だけで、順序集合を作れる。特に、自分だけだから、自分とは、常に比較でき、全順序集合。だから、順序集合 {a} の全順序部分集合、つまり{a} の鎖。これで、全部の条件が満たされ、{\{\alpha \} \in \mathscr{C}} が、確かめられた」


若菜「えっ、3文字くらい進むのに、こんなに時間がかかるの?」

私「私も、大学に入ったばっかりのとき、1日に数学の本が、1行くらいしか、読めなくて、絶望したものだった。悲観することはない。スピードは、確実に上がる」

麻友「今日は、数学で、条件を1つずつ確かめるには、どうやるか、見せてもらったわね」

結弦「面白かったよ」

私「それじゃ、解散」

 現在2023年9月7日22時04分である。おしまい。